客数回復は道半ば 中国の国慶節商戦総点検 円安で購買力は健在
高級ブランド
「日本製のものが大好き」―。ジェイアール名古屋高島屋(名古屋市中村区)を訪れた中国人の女性は、日本メーカーの化粧品を手にとってほほを緩めた。免税カウンターの担当者は「国慶節に入ってからカウンターを訪れる7、8割が中国人。『ルイ・ヴィトン』や『エルメス』など、高級ブランドのバッグが人気」と明かす。国慶節の期間中、免税品全体の売上高は19年実績に比べ2割増と、コロナ禍前を初めて上回った。
松坂屋名古屋店(名古屋市中区)も9月29日から10月5日までの速報値で「中国人客数は19年比で約3割にとどまるが、売上高は約9割まで回復した」と打ち明ける。高級ブランドのバッグや化粧品などに需要が集中しているという。
冷静
訪日客に人気の高山市。市の海外戦略課の担当者は「中国人観光客が増えたという声は聞かないね」と話せば、飛騨高山旅館ホテル協同組合の担当者も「いろいろな国家間の問題がある中で、市内宿泊施設の期待感は薄い」と冷静に受け止める。
もっとも、高山は19年には年間外国人宿泊客数が61万人を超えた実績を誇る。足元でも、欧米地域を中心に台湾、ベトナム、タイなどアジアからの観光客は回復傾向にあるという。
一方、名鉄観光サービス(名古屋市中村区)の広報担当者は「中国客の旅行代金が19年比5割増と伸びた。訪日客全体では15~20%増で、他国と比べても伸び率は大きい」と話す。団体客中心に国慶節需要を取り込めた企業もあるようだ。
時間がかかる
名古屋マリオットアソシアホテル(名古屋市中村区)では、中国客の宿泊数が19年比5割まで回復した。素泊まりプランなどが人気で、価格帯は3万円超えが多いという。谷口百子広報担当は「19年と比べると、サービス料の改定もあり、単純比較は難しいが、価格帯は上昇している」と話す。
ANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋(名古屋市中区)の矢澤宏幸セールス&マーケティング部長は「団体が戻るにはまだ時間がかかる。中国に頼らず、欧米含め富裕層の個人客をターゲットにOTA(オンライン旅行代理店)での扱いを強化する」と先を見据える。
東海経済の動向に詳しい、三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員の塚田裕昭氏は「中国が日本への団体旅行を解禁したが、(福島第1原子力発電所の)処理水の海洋放出を受け反日モードが高まりつつある」と指摘した上で、「中国と日本を結ぶ国際便の数が十分に戻っていない状況だ。国慶節の需要は観光、小売り関係でプラスの影響は出ていると思うが、訪日客の全盛のころに比べると、まだまだ回復の途上だ」と話す。
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