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日本人材派遣協会中部地域協議会座談会
深刻度を増す人手不足感、派遣事業の最新動向や取り組み語る/
人材派遣への期待高まる

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国内景気は新型コロナウイルスの感染拡大で予断を許さない状況が続いているが、輸出型製造業が集積する中部地方はいち早く繁忙感が回復し、日本経済復活のけん引車として期待されている。その一方で、少子高齢化社会の進展から人手不足感は深刻度を増すばかり。労働力需給機能として重要な役割を果たす人材派遣業界への期待値は年々高まっている。愛知労働局と日本人材派遣協会中部地域協議会から代表して7人にお集まりいただき、コロナ禍における派遣事業の最新動向や認可・指導の状況、派遣労働者のキャリア形成支援、「同一労働 同一賃金」実現への取り組みなどを聞いた。
(司会は中部経済新聞社編集局部長兼論説室長・岩崎幸一)

参加者集合

座談会出席者

愛知労働局需給調整事業部部長 大嶋 健二氏 愛知労働局需給調整事業部部長
大嶋 健二氏

愛知労働局需給調整事業部需給調整事業第一課課長 山﨑 孝義氏 愛知労働局需給調整事業部需給調整事業第一課課長
山崎 孝義氏

愛知労働局需給調整事業部需給調整事業第二課課長 山下  保氏 愛知労働局需給調整事業部需給調整事業第二課課長
山下 保氏

日本人材派遣協会中部地域協議会会長 (㈱サンスタッフ代表取締役社長) 丸山 恭一氏
日本人材派遣協会中部地域協議会会長
(㈱サンスタッフ代表取締役社長)
丸山 恭一氏

日本人材派遣協会中部地域協議会副会長 (トヨタすまいるライフ㈱人材サービス部部長) 谷澤由美子氏
日本人材派遣協会中部地域協議会副会長
(トヨタすまいるライフ㈱人材サービス部部長)
谷澤 由美子氏

日本人材派遣協会中部地域協議会副会長 (㈱リクルートスタッフィング東海ユニット長) 小澤 一広氏
日本人材派遣協会中部地域協議会副会長
(㈱リクルートスタッフィング東海ユニット長)
小澤 一広氏

日本人材派遣協会中部地域協議会副会長代理 (パーソルテンプスタッフ㈱第二営業本部本部長) 近藤 敬吾氏
日本人材派遣協会中部地域協議会副会長代理
(パーソルテンプスタッフ㈱第二営業本部本部長)
近藤 敬吾氏

―最初に、派遣事業の動向と潮流について伺います。まず、愛知労働局から現在の許可・届出状況を教えてください。

山﨑:愛知労働局管内の労働者派遣事業許可申請届出の状況(2015度末~22年1月)は、特定派遣事業の届出制が2015年9月に廃止されたため、(旧)特定労働者派遣事業所数は2018度末に99、令和元年末にはゼロとなり、反比例する形で、2017年から18年にかけて大幅に一般の派遣事業所が増えました。その後は2019年度末の3694をピークに2021年1月末3672、2022年1月末は3603と、この2年間はむしろ減少しています。コロナ感染症の影響で派遣労働者を派遣できなかったこと、派遣事業をやめるところが増えたこと、さらに特定から一般に切り替えたものの更新しなかった事業所が多かったことが要因です。今後は経済が上向くことによって、派遣労働者数、派遣事業所数が増加すると予想しています。

―業界から見た中部地区の動向はどうなっていますか。

丸山:日本人材派遣協会(以下JASSA)がまとめた派遣社員実稼働者数(東海エリア)は、緊急事態宣言が出た2020年4月から急激に落ち込み、前年比90%台になっています。それまでは前年比百数%を維持していたのですが、2020年10~12月期の90・6%で底を打ちました。その後は少しずつ回復し、2021年7~9月期から106・6%と前年を上回る稼働者数になっています。観光、飲食、サービスについては依然厳しい状況にあり、まだ回復が見通せません。製造を中心としたニーズは旺盛ですが、なかなか人が集まらず、特に自動車関連の人手不足は深刻です。
私どもは、厚生労働省からの派遣労働者の雇用維持等に関する要請を受けて、派遣先のご理解を得ながら、雇用維持に努めてまいりました。雇用調整助成金の展開や審査等、労働局の動きがとても早かったおかげで、雇用は持ちこたえることができました。

―認可・指導監督の状況について伺います。労働局の指導監督状況、指導実施の件数は。

山下:2020年度指導監督実施状況(2021年6月発表)によると、調査を行った事業所数は、2020年度が1438件、2019年度は1849件、前年度比マイナス22・2%となっています。2020年度に関しては、緊急事態宣言下で訪問を見合わせたり、派遣元がテレワークを行っているケースが多く、計画どおりに調査ができなかったのが実情です。
2020年度1438件のうち労働者派遣事業1149件で、その内訳は派遣元781件、不更新・廃止が288件、派遣先が80件となっています。
請負・委託関係への調査は、いわゆる偽装請負がないかどうかの取り締まりになるのですが、構内作業の現場に立ち入ることがコロナ禍では非常に難しく、2020年度に関しては非常に少ない件数になっています。

―法令遵守、コンプライアンスの徹底について、行政サイドからの認可・指導のポイントは。

山﨑:派遣事業を適正に運営していただくために、事業者向けの事前説明会を行い、要件や注意すべき点の説明を行っています。その後、許可申請が上がってきた事業所に対して厳正な審査を行います。資産要件は基準を満たしているか、労働保険・社会保険の加入がきちんとできているかといったところに重点を置いて判断をします。
事業を開始した後も、毎年、6月1日現在の運営状況を事業報告という形で報告していただきます。派遣労働者の就業実態を把握することと、派遣の事業運営の状況を把握することが目的です。この報告には法定の提出期限がありますので、それを過ぎても提出がないところに対しては督促と是正指導を行います。

―派遣労働者の「同一労働同一賃金」実現に向け、2020年4月に労働者派遣法が改正されました。浸透の状況はいかがですか。

山下:コロナ感染症の影響で計画していた制度の説明会や研修会が中止になり、周知が不十分なままスタートすることになってしまいましたので、定期指導の機会を捉えて周知・啓発に取り組んでいます。

―行政側の是正に対して各社の対応、取り組みは。

丸山:派遣先にもご理解をお願いする活動を始めた矢先、コロナ感染症の影響が出始めました。理解活動を進めながら雇用確保にも追われ、休業せざるをえない人の助成金の申請等ごちゃごちゃした状態で「同一労働同一賃金」を実現するための改正派遣法が施行された感じがします。現在協議会加盟会社85社に向け、オンラインで研修会を行い、ブレイクアウトルームを活用し情報交換が出来るよう取り組んでいます。

小澤:「同一労働同一賃金」について、本社サイドや協会からもマニュアルや運営方法が来たのですが、いざ現場で回す段になると分からないことが結構ありました。労働局の皆様との定期的なディスカッションや、当地域協議会が開催したオンラインセミナーには労働局の方に講師をお願いし、大変分かりやすい内容でした。

―受け入れ先企業側の理解はいかがですか。

近藤:ご理解を得るために1社1社ご説明をさせていただいて進めていくという形です。派遣社員の雇用を守り、待遇改善のご理解を得るためのお願いに派遣先に何度も足を運びました。

―コロナ禍の影響はどんなところに出ていますか。

丸山:派遣会社では仕事のやり方が大きく変わりました。登録は一気にオンラインに切り替わりました。派遣社員の働き方も、派遣先の環境によっては在宅勤務を求められたり、時差出勤、時間短縮等、新しい働き方への適応が求められるようになってきました。

谷澤:コロナ感染症対策でオフィス系は在宅ワークが増え、一気にDX(デジタルトランスフォーメーション)が進みました。派遣先業務の効率化によって、逆にオフィス系の派遣社員の需要が減っているという現実もあります。

近藤:当初は在宅勤務が可能な派遣先が少ない状況でした。派遣先社員の方と同様に派遣社員も在宅勤務ができるようにお願いしたり、対応できる派遣元では在宅勤務用のパソコンを用意したり、在宅ができる環境づくりのお手伝いをしたことで、派遣社員の在宅勤務率は一気に上がりました。こうした取り組みが結果的に派遣社員の雇用を守ることにつながったと思います。

―慢性的に人手が足らない中、派遣労働者をつなぎ止める部分で、福利厚生も大事になってきますね。

丸山:2020年の改正派遣法に伴う「同一労働同一賃金」に対応するには、かなり待遇を上げる必要がありました。通勤費、退職金、賞与といった部分では待遇が上がった派遣社員が多いのではないでしょうか。
派遣社員の働き方も変わってきました。今後はキャリア形成支援がより重要になるでしょう。JASSAには、キャリア形成支援としてeラーニングのコンテンツが2000コンテンツほど用意されており、初級から上級まで選択して受講していただけます。
昨年秋に行ったアンケートによると、派遣という働き方に魅力を感じて満足している方が半数に達しています。仕事、勤務時間、好きな勤務地、期間が選べる。困ったときに派遣会社に相談できる。こういったメリットを感じてくださる方がたくさんいます。協議会としてうまくPRしながら、より働きやすい、働きがいのある仕事を提供していきたいと考えています。

―若年層向けに考えられていることはありますか。

小澤:当社では、「キャリアウィンク」という若年層の無期雇用派遣サービスがあります。23年卒の学生の方だけでなく、現在販売職などに従事し、今後事務職に転職したい既卒の方からも応募をいただいております。今後も就職フェアなどにも参画し、より多くの方にサービスを知って頂ける様、周知をしてまいります。

―働き方の自由化と多様化により、登録がさらに進みそうですね。

大嶋:現在、ハローワークに登録している何万人という求職者は、派遣という言葉を知っていても実体を知らない方がほとんどです。中には食わず嫌いで派遣の求人を外してしまう方もいらっしゃいます。そこで、ハローワークに私ども需給調整事業部から職員を派遣して、求職者向けの研修を行っています。派遣と請負の違い、どういう状態が違法なのかを働く方自身にまず知ってもらう必要がありますね。

―シニアの登録はありますか。

大嶋:求職者向けの研修会に参加される方は、むしろ高齢の方が多いです。派遣も今後の一つの選択肢に入れてみたいと興味を持たれています。

丸山:経験とスキルの豊富なシニアの方を中小企業の派遣先にご紹介すると大変喜ばれます。自社では育てられない人が来てくれて若い人たちを育ててくれる。派遣された方にとっても、自分のスキルを伝承できるのは、やりがいがあるものです。今後もどんどん増えていきそうですね。

―愛知労働局の今後の指導方針は。

山下:一点目は、来年度も今年度と同様に、労働者派遣契約の解雇や雇止めといった事態を招かないよう、適正な雇用安定措置の履行に向けた取り組みを行います。
二点目は、2020年4月以降、派遣元事業主は労働者派遣を行う際の待遇について「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」のいずれかを選択することとなりました。これは派遣労働者の不合理な待遇差の解消を目的とするもので、派遣元事業主の約9割が労使協定方式を選択しています。労使協定方式では、過半数代表者と派遣元事業主の間で労使協定を書面で締結していただくことになります。
労使協定の点検は、毎年6月に提出いただく労使協定書の内容を見させていただいて、不備がある場合は指導をすることになりますが、過半数代表者の選任方法が適正に行われていないといった労使協定の中身の不備が目立ちます。
三点目は、いわゆる偽装請負です。コロナ禍でこの2年間訪問による指導が十分にできていませんので、指導を強化していきたいと考えています。
さらに、情報公開で派遣料金と派遣元のマージンを公表することとなっているのですが、公表されていないケースが散見されますので指導に努めてまいります。

―中部地域協議会への加入推進の取り組みは。

丸山:まずはコンプライアンス第一で、きちっと法律に基づいた活動を行う。そして、キャリア形成を中心とした派遣社員のキャリアアップ、育成に取り組み、お客様に満足していただけるサービスを提供していく。それがキーになってきます。残念ながら協会に未加入の会社もたくさんありますので、そういう方たちにできるだけ入会していただいて、共に取り組んでいきたいと考えています。
愛知労働局の方に来ていただき、オンラインセミナーを開催しています。一昨年は「雇用調整助成金の活用方法」というテーマで、昨年は同一労働同一賃金を中心とした労働者派遣法のコンプライアンスの話をしていただきました。また、遠方の方にも聞いていただける、日頃地域協議会に来ることがない若手の方も勉強できるというオンラインならではのメリットもありますので、今後もぜひ続けていきたいですね。

谷澤:JASSA加入のメリットはたくさんあります。2015年の労働者派遣法改正で、キャリアアップの措置として、「段階的かつ体系的な教育訓練」を派遣元が実施しなければならなくなりました。自社で研修プログラムを準備することが難しい中小の派遣元は、「JASSAキャリアカレッジ」を使って研修していただくことで要件をきっちり守ることができます。このほか「JASSAリーガルテスト」では、派遣事業に関する法律をeラーニングで確認できるようになっています。また、労使協定方式の派遣労働者の基準賃金は計算が大変ですが、JASSAが提供する「自社用賃金テーブル作成 シミュレーター」を使うことにより短時間で誤りなく賃金の算出が可能です。このように協会に加盟していただくとコンプライアンスを遵守しながら派遣事業の運営をすることができ安心です。

小澤:私は昨年4月に愛知の責任者に着任したのですが、この地域は労働局とのコミュニケーションが密ですね。毎年、セミナーの形で地協会員にいろいろなことを教えていただける。中にはここでしか聞けない情報があったりします。良い派遣の仕組みをつくろう、派遣社員の働く環境を良くしていこうという行政と協議会の思いが一致していると感じています。

近藤:派遣という働き方で新しい雇用を創り、雇用を安定させる。変わっていく法律を理解し、適切な事業運営をする。そういうことを皆さんと協力しながら進めたり、確認をし合ったりできる場というのは、大変貴重です。そのような場を定期的に持ちながら、行政との結びつきが強い伝統と歴史をしっかり引き継いでいきたいですね。

丸山:中部独自の取り組みとしてオンラインセミナーを開催しています。一昨年10月はスポーツドクターの辻秀一さん、昨年3月には元ラグビー日本代表キャプテンの廣瀬俊朗さん、今年1月には五輪メダリストでメンタルトレーニング指導士の田中ウルヴェ京さんをお招きし、協議会会員の社員の皆様に元気になっていただけるお話をしていただきました。

―大嶋部長から中部地域協議会に期待することは。

大嶋:私どもは、派遣も働き方の選択肢の一つとして、早く失業状態から脱していただきたいという思いを持って提案や説明を行っています。何年かに一度法律改正や部分的な修正があって、それを知らないでいると法律違反になる場合もあります。同じ思いを持つ協議会の皆さんと協力関係を築いて、楽しく働いていただける環境を目指します。

―協議会から最後に一言。

丸山:われわれは、コンプライアンスをきちんと守り、派遣社員の育成や、キャリア形成支援を行っている団体です。安心して加盟会社へご用命ください。

―ありがとうございました。

座談会の様子

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