トヨタグループ、工場で広がる水素利用
水素を利用しようとしているのは主に熱を必要とする設備だ。水素は燃えやすい特性を持ち、親和性が高いからだ。ジェイテクトの花園工場(岡崎市)にある鋳造設備では、材料に熱を加える「水素バーナー」の導入を進めている。これまでの燃料のガスから置き換えることができれば、燃焼に伴う二酸化炭素(CO2)を減らせる。
トヨタ自動車・水素ファクトリートップの山形光正氏も「ゴムやガラス製品の熱処理など、水素が燃料として適している工程がたくさんある」と説明。水素利用が一段と広がる可能性を示唆した。
水素で発電するFC(燃料電池)フォークリフトの導入も。豊田自動織機は、高浜工場(高浜市)で自社製造の車両を約40台利用している。工場内には水素充填(じゅうてん)所を設置。作業場所の近くで素早く水素充填できるよう環境を整え、作業効率などが高まるか効果を検証中だ。
自前で水素を製造する試みも相次ぐ。水素価格は他の燃料と比べ割高感があるほか、安定的に調達する仕組みも確立されていないのが現状で、一連の課題解消につなげようとしている。
デンソーは3月、福島県の生産子会社・デンソー福島でトヨタとともに水素を製造する実験を開始した。トヨタ製の水素製造装置は、電気と水道水から水素をつくる。再エネ由来の電気を用いるため、製造時に実質CO2を出さない「グリーン水素」になる。
水素はそのまま工場内で使用。同じ場所で水素を「地産地消」することで水素運送の手間などを解消。25年まで検証を行い、コストや調達の安定性などを確認する。
また、アイシンは自ら水素を製造する技術開発に乗り出している。日本特殊陶業(名古屋市)や九州大学(福岡県)と連携し、電気と水から水素をつくる固体酸化物形電解セル(SOEC)の研究を進めている。
今後、工場での水素利用が広がれば、水素に関する課題の解消につながることが期待されており、グループ各社は水素社会実現への一助を担いたい考えだ。
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