中部シンものづくり (1) 第1章 部品メーカー、迫られるEV対応 「10年後、仕事が半減」 危機感から構造転換急ぐ
「10年後には仕事量が半減する」。愛知県内のある排気系部品メーカーの社長は、納入先の調達担当者からこう通告された。
戸惑い
長年にわたり2次メーカーとして中部の自動車生産を支え、顧客との信頼関係も築いてきたと自負してきただけに、突然の通告に戸惑った。数年前に新規事業を始めたが、赤字が続いている。同社の社長は「経営資源も限られる。だらだらと挑戦できない。同業との経営統合も含めて身の振り方を考えなければならない」と苦渋の表情を見せる。
「池のコイのように口を開けていれば、仕事が降ってくる時代は終わった」。自動変速機(AT)部品メーカーの社長も危機感を示す。開発力と営業力を磨き、自社技術を積極的に顧客に売り込み、電動化製品の新規受注を目指している。しかし「これまでは顧客の設計した製品を正確にスピーディーに製造するのが当社の『仕事』だった。提案営業の難しさに悩んでいる」と肩を落とす。
試金石
一方で、前に進むことを決断した会社もある。
「絶対に成功させないといけない」。自動車部品メーカーの福寿工業(羽島市)の高木豊社長(64)は、9月に本社工場で量産を開始した「モーターシャフト」に関し、ややプレッシャーを感じているようだった。生産ラインには先駆的なデジタル技術を取り入れ、品質不良が生じないよう目を光らせている。
モーターシャフトは、ハイブリッド車向けに納入しており、将来的には電気自動車(EV)向けにも応用できると期待している。電動化分野の今後の受注拡大への試金石になると位置付けている。
EVの急速な普及に対する焦りは強い。同社はこれまで燃料噴射装置や吸排気装置の部品、変速機の構成部品など主にガソリンエンジン車向け部品を手掛けており、仮に自動車が全てEVになれば「大半の部品が無くなる」(高木社長)からだ。
モーターシャフトの生産を始めた工場は、実はもともと別のプレス部品を造っていた。将来性に加え、採算性にも課題を抱えていたことから新規受注を取り止めることにした。将来への危機感が、電動化に伴う構造転換へ突き動かしている。
◇ ◇ ◇
世界的なEVシフトや自動運転、カーボンニュートラルなど、自動車業界で変革が進んでいる。これまで内燃機関車の生産を支えてきた地元の部品メーカー各社も、事業転換を迫られている。各社の生き残りをかけた挑戦を紹介する。
記事をもっと読むには・・・