米沢で挑む中部のモノづくり(中)
住理工山形 愚直な改善、海外に展開 独創的装置も自前で製作
住友理工グループで、2016年に山形県米沢市で工場を稼働した住理工山形。人手で作業する汎用設備を利用し、主力の防振ゴムを生産している。汎用設備による製品の「マザー工場」の役割を担い、米沢で愚直に積み重ねている改善を海外に展開している。
■空ペットボトル
住理工山形での改善は多彩だ。防振ゴムの金具に接着剤を塗布する工程では、金具をセットするパレットを木製から段ボールに切り替えている。米沢の段ボールメーカーに依頼し、多様な形に対応。輸出梱包(こんぽう)用の段ボールを使い、段ボールの目を格子状に重ねて強度も持たせた。木製パレットに比べコストを10分の1に減らした。
パレットに金具をセットする装置も自前で製作した。パレットの上でランダムに金具を転がし、セットする仕組みだ。決して全てセットできなくても、9割ほどセットできれば残りは人手で済ます。比較的緩く実用的に運用し、少しでも作業時間の削減を狙う。
改善にもお金はかけない。工場の一角では、女性従業員が補助器具を使い重たい荷物を楽々と持ち上げていた。補助器具に利用しているのは、不要になった空のペットボトルだ。中には工場で発生した研磨粉を入れて、重しにしている。
このほか、製品の形に不良が無ければ箱のふたが電気なしで自動的に開く「フタパタカラクリ改善」や、出荷前の自動ラップ巻き設備など独創的な装置も自前でつくった。一連の改善により、住理工山形は事業利益で黒字を確保している。
片岡幸浩社長は「一つ一つの改善効果は大きくないが、積み重ねれば大きな効果を引き出す。コツコツと取り組んでくれる山形の方の地域性にもあっている。常に改善を続ける」と力を込める。
■7割が汎用設備
住友理工は、防振ゴムで世界シェア25%とトップを誇る。世界各地で生産し、全体ではアジアなど約7割で住理工山形のように汎用設備を使っている。自動化した場合、車両の改良に合わせ設備改造など投資がかさむため、大量生産品を自動化設備が担当し、それ以外の製品を汎用設備が担っている。
汎用設備は人手で作業する分、改善の余地も大きい。かつては海外拠点の運用は各拠点任せになっていたが、住理工山形での改善を海外にも展開することで全世界の底上げを目指している
同社での改善は、すでにタイやインドネシアにも展開。実際、段ボール製パレットやフタパタカラクリ改善などは海外現地で利用されている。過去には中国や米国、インド、インドネシアの工場から住理工山形に視察に訪れた。米沢発の改善の取り組みが一層とグローバルに広がる様相だ。