中部企業で株主総会 企業統治、成長戦略に関心 初の株主提案も
「日本を強く」
総会シーズン直前に発表された、トヨタグループによる豊田自動織機の株式非公開化計画。豊田織機以外のグループ各社でも株主から質問が相次いだ。デンソーでは、同社取締役を務める豊田章男トヨタ自動車会長が非公開化について「日本を強くするのが目的。10年、20年先も自動車こそ国の成長のど真ん中にいるべき」と訴え、株主に理解を求めた。
株式非公開化と同時に豊田織機が保有するトヨタグループ4社の株式を各社に売却し、持ち合いを解消する。豊田通商の今井斗志光社長は同社の総会で「グループ内で持ち合いの解消を進めていた。グループの中では、株がなくても互いの強みを伸ばしていける」と、今後も変わらない連携・協調の精神をアピールした。
工場災害への対策も重要課題として浮上している。愛知製鋼では安全への取り組みを問われ、後藤尚英社長が「現地現物で対策を進めている。マネジメント層も現場に足を運び、負担ある作業の解消などに取り組み、事故ゼロを目指している」と強調した。
活躍の場
アイシンでは女性の幹部職の割合について質問があり、会社側は「女性の基幹職割合は25年で2・5%。これを30年までに6%に伸ばそうとしている。育児休暇などの制度は充実した。これからは活躍の場を作っていくことに力を入れていく」と回答。豊田通商では今後の女性活躍に向けて「女性が海外駐在をする際の環境をより良くしたり、研修を行って皆の理解を深めていく」とした。
企業価値向上や株主還元にも関心が集まった。
事業ポートフォリオの変革に向け、工作機械などの育成に取り組むブラザー工業は、産業用領域のM&A(合併・買収)の考え方や計画について株主から質問が上がった。会社側は「今後も、方針を変えずに検討を進めていく」と答えた。
ガス・水道メーターの製造を手掛ける愛知時計電機は、今年初めて株主提案を受けた。株主還元の水準引き上げや政策保有株の売却などを求める内容だったが、総会当日は関連する質問もなく、提案は否決された。
名古屋鉄道の株主からは、事前質問も含めて株主還元策の充実を求める声が目立った。高崎裕樹社長は「株価については、今の状態を非常に重く受け止めている。この状態がいいとは決して思っていない」と強調。「株価向上に向けての施策を議論し、検討をして、できるだけ手を打てるように進めていきたい」と述べた。
地元への理解
JR東海の株主からは、リニア中央新幹線の計画で、南アルプストンネル静岡工区の着工の遅れを懸念する声などがあった。丹羽俊介社長は、静岡県の鈴木康友知事や関係自治体と意見交換を重ねてきたことを説明した上で「引き続き、地域の皆さまのご理解を得られるよう、真摯に取り組んでいく」と述べ、リニアの早期開業に意欲を示した。
中部電力の総会では、14年間、全面停止が続く浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の再開時期や安全性、工費などに関する質問が出た。林欣吾社長は「(原子力規制委員会の)新規制基準への適合性確認をできるだけ早期にいただけるように丁寧に説明することで、一日でも早い再稼働を目指したい」と話した。
東邦ガスでは、今後のガス事業の成長戦略や新規事業への取り組みを問う質問が上がった。米トランプ政権が日本勢などの参加を求めた米アラスカ州の液化天然ガス(LNG)開発プロジェクトについて、山碕聡志社長は「具体的には検討していないが、総合的に判断していきたい」と述べた。
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