中部自動車部品24社前3月期、円安追い風最終増益13社
電動化製品けん引
「電動化製品や先進運転支援システム(ADAS)を伸ばすことができた」。デンソーの林新之助社長は胸を張る。
デンソーを含め純損益の増益組13社は、ハイブリッド車(HV)向け電動化製品など成長分野での受注拡大が利益成長をけん引した。アイシンも、HV用変速機など電動ユニットの販売を231万台と前期に比べ2%増やした。愛知製鋼は主力の特殊鋼に加え、HVなど電動車用の放熱部品を手掛ける部門で増益を確保した。
円安の追い風も受けた。25年3月期の平均為替レートは1ドル=153円前後と前期に比べ8円程度の円安になった。円安により営業利益でアイシンが260億円、デンソーが250億円、豊田自動織機が204億円、日本特殊陶業が102億円の増益要因になった。
利益率平均は5%
増収率で最も伸び幅が大きかったのは、ばねを生産する中央発条(名古屋市)。トヨタ自動車のスポーツタイプ多目的車「ランドクルーザー」向けの足回り部品が大幅に伸びた。また、純利益の増益率では中央可鍛工業(名古屋市)がトップになった。中国の持ち分法適用会社からの投資利益が増加した。
一方で8社が純損益で減益、3社が赤字になった。主因は中国事業の不振だ。赤字3社のうち大豊工業(豊田市)は日系完成車メーカーが中国で苦戦している影響が直撃した。プレス部品などのJ―MAX(大垣市)も主要得意先のホンダの中国での減産が響いた。
収益性の改善は進んだ。本業の稼ぐ力を示す売上高営業利益率は、16社が前期比で改善した。24社の平均は5・0%と0・4ポイント向上した。
利益率トップの日本特殊陶業は、19・9%と製造業として極めて高い水準を維持している。グローバルに補修用のエンジン点火プラグを展開し、高い競争力を誇っていることが高い収益性を下支えしている。
14社が減収予想
26年3月期は、業績予想未定の大同特殊鋼(名古屋市)を除く23社のうち14社が減収を見込む半面、14社が純損益で増益(黒字化含む)の見通し。
懸念は米国の高関税政策だ。関税の先行きが見通せない中で多くが26年3月期予想に関税影響を織り込むことを見送った。大同特殊鋼は関税影響などが見通せず予想を未定とした。
アイシンは営業利益予想に関税影響を織り込み、利益全体の約1割に当たる200億円分下振れると見込んだ。伊藤慎太郎副社長は「正直どうなるか分からないが、いったん仮の影響額を織り込んだ」と話す。
加えて為替は円安から一転して円高を見込み、業績の向かい風になるとみている。各社とも1ドル=145円程度と7~8円の円高になると想定し、利益を押し下げる。
取り巻く環境が厳しさを増す中で各社とも成長を持続できるか正念場を迎える。
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