福島で磨く中部のモノづくり(4)
デンソー福島社長 岩瀬雅俊(いわせ・まさとし)氏に聞く 競争力の高いモノづくりへ 福島人材の知恵生かす
2008年に設立し、カーエアコンなど自動車用熱機器製品を手掛けるデンソー福島(本社福島県田村市)。18年には敷地内に新工場を建設し、ガソリンエンジン用燃料系製品の生産を新たに始めるなど、進出後も事業拡大を続けている。岩瀬雅俊社長に現場のモノづくりの進化や今後の展望について聞いた。
―これまでの成長をどうみている。
「工場立ち上げ時は西尾市のマザー工場から最新の設備を移転し、本社の手を借りながらベースを築いた。これを自分たちのものにしたのがデンソー福島の人材が成せた技だ。福島の人たちの粘り強く真面目に取り組む人柄や、皆が一体感を持って取り組むチームワークの良さが発揮された」
「18年から生産を始めたエンジン製品は同社として初めて海外への輸出も計画している。工場の稼働率や製品の良品率がマザー工場を上回るなど良いオペレーションができており、当社の実力が本社に認められた結果だ。小さな工夫で生産効率を高める『からくり』は、福島の人間の100%の知恵を生かしたものもある。グループ内に逆輸出されるまでモノづくりのレベルが上がっている」
―東北ならではの取り組みは。
「先月から、カーエアコンの生産ラインで、トヨタ自動車東日本の生産ペースと同期化させる挑戦を始めた。マザー工場でも前例がないため、福島の人間で知恵を出し合い取り組んだ。これが成熟していけば、競争力の高いモノづくりになるだろう」
―福島の立地環境のメリットは。
「新幹線や東北自動車道など交通網が充実しており、関東以北のお客さまに製品を届けやすい。人材面では、県内に日本大学工学部や工業高校などがあり、理工系を学ぶ学生が豊富だ。また、福島県や国から手厚い補助の仕組みがあり、事業拡大をサポートしていただいた」
―原発事故による放射線量の影響は。
「現在、不安に感じることは全くない。県の測定に加え、弊社も工場内と駐車場前にモニターを置いて毎日計測しているが、数値はかなり低い」
―部品の現地調達は。
「当社の内製品を含めない現地調達率は5%程度。地元企業は技術面では当社の要求に達している企業が多いが、中部企業と比べると、量産化のコスト面で課題がある。現地調達拡大は競争力を高めていく重要な要素になる。地元企業とのネットワークを広げる活動を進めたい」
―今後の展望について。
「23年度末までにエンジン用製品の生産を中部から全て移管する。従業員数は600人強と17年比で倍増にする計画だ。今後、新たな製品を立ち上げる話がある際には『デンソーだったら福島だぞ』と候補にあがるようにしたい」
(おわり) (この連載は東京支社が担当しました)