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環境特集
1.5℃の約束 温暖化対策、迫るタイムリミット

今後5年間の世界平均気温過去最高になる可能性98%

世界気象機関(WMO)は今年5月、世界の平均気温が今後5年間で過去最高レベルになる予測を発表した。CO₂をはじめとする温室効果ガスによる熱上昇に加え、今年後半からのエルニーニョ現象が拍車をかけるとみている。

世界の平均気温が最も高かったのは2016年。推計では2023~2027年のうち少なくとも1年は、過去最高を更新する可能性が98%、産業革命前より1.5度以上高くなる可能性が66%になるという。

各国はパリ協定で、産業革命前と比べて気温上昇を2度未満に抑えることを目指し、努力目標として1.5度以下に抑えると約束した。気温上昇が1.5度を超えると極端な洪水や干ばつ、山火事、食料不足に陥る可能性が飛躍的に高まるため、科学者らは1.5度を重要な転換点と見なしている。

この10年で行う選択が数千年先まで影響を及ぼす

国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)も警鐘を鳴らす。今年3月、9年ぶりに公表した評価報告書で「この10年で行う選択が数千年先まで影響を及ぼす」と強調し、取り返しがつかなくなる前に、直ちに削減強化が必要であることを示した。

IPCCの評価報告書は、世界中の科学的知見をもとに各国の政府代表が議論、承認した、言わば「世界が合意した科学的事実」だ。人間活動による候変動によって世界平均気温は産業革命前より、すでに1.1度上昇。残りは0.4度しかない。このままでは2030年を待たずに1.5度を超えてしまう危機的な状況にある。それでもCO₂排出量は増え続けている。

では具体的に、いつ、どれだけのペースで削減が必要なのか。IPCCの評価報告書では次のように示している。

気温上昇を食い止めるにはあと2年、2050年までにCO₂排出量を減少に転じさせ、2030年までに2019年比43%減、2035年までに同60%減とし、その後も実質ゼロに向けて減らし続ける必要がある。この極めて困難な道のりに射す一条の光明となるのが再エネによる発電コストの下落だ。2010年から9年間で太陽光発電コストは85%減、風力発電コストは55%減。また、リチウムイオン電池の価格についても85%下落している。北欧諸国の炭素税額に近い、1㌧=100㌦以下の施策で2030年までに世界のCO₂排出量を半減できるとしている。そのためには脱炭素投資のさらなる拡大、カーボンプライシングを含めた法整備といった各国の大胆な政策が必要となる。

深刻な被害を食い止める時間が刻々と失われるなか、各国はこの10年間にどんな選択をするのか。後の世代に説明できる行動が求められている。