三遠地方/国道23号蒲郡バイパスの開通視野/工業団地の造成構想進む/イオンモール豊川オープン1年で軟着陸成功/注目集める豊川市
三遠地方の中核都市の一つ、豊川市に注目が集まっている。国道23号蒲郡バイパスが2025年3月に開通することを受け、豊川為当IC周辺に工業団地の造成構想が進んでいる。自動車アクセスの利便性が高いのが特徴だ。また東三河最大のショッピングセンター(SC)であるイオンモール豊川がオープンして1年が経過した。ソフトランディング(軟着陸)に成功した足元の状況を紹介する。
豊川市の工業団地は、2028年ごろに分譲が始まる「白鳥地区工業団地」(白鳥町周辺、分譲面積6・3ヘクタール)がすでに問い合わせだけで完売見込みが立つほど。「その次」としてまだ構想段階の「豊川為当インターチェンジ(IC)付近工業団地」(為当町周辺、同14ヘクタール)にも問い合わせが増えている。いずれも国道23号蒲郡バイパスの開通が強い追い風になっている。
豊川市を東西に貫く基幹道路は現在、東名高速道路と国道1号があり国道23号蒲郡バイパスが加わることになる。その蒲郡バイパスは豊橋市と豊明市を結ぶ名豊道路(全長72キロメートル)の最後の未開通区間で、全線開通は地域の産業物流振興へ大きな貢献が期待できる。
豊川市の白鳥地区工業団地は国道1号線沿いに立地する。愛知県企業庁が事業主体となることが今年1月事実上決まった。「企業庁は企業進出の手応え(内々定)がないと事業主体を引き受けない」(企業庁OB)ことから完売する可能性が高い。
続く豊川為当IC付近工業団地は白鳥地区工業団地から南西方向へ約2キロメートルの場所に計画する。国道23号蒲郡バイパスへの入り口となる豊川為当ICの隣接地にする方向で用地買収の検討に入る。分譲するための区画割りや価格はまだまだこれからだが、白鳥地区工業団地の人気を上回る可能性すらある。
足元の為替相場は円安基調が続き、業績好調な製造業は国内投資を増やす動きを見せつつある。豊川市の2カ所の内陸工業団地はその受け皿として、これまで以上に注目を集めることが予想される。
イオンモール豊川は店舗面積5万平方メートル、テナント数約200、従業員3千人を誇る。岡崎市と静岡県浜松市にあるイオンモールのちょうど中間に位置し、「十分な商圏がある」(イオン)として出店した。
立地する場所は国道1号から自動車で約3分で隣接地に豊川市民病院がある。オープン前には「渋滞がひどく、例えば救急車が病院にたどり着けないこともあるのでは」という不安が多かった。
その不安を打ち消すように、豊川市が導入道路の拡張を進めた。救急車が緊急時に走るゼブラゾーンを十分に確保するほどの念の入れようだった。イオンもその動きに応え、SC隣接地に十分以上の駐車場を用意。駐車場からSCまではやや歩くが、駐車場に入るための渋滞を極力避ける工夫をした。この結果、この1年、目立った渋滞はほとんどなかった。
地元経済への影響は従業員不足という形で現れた。人手不足感は従来からあったが、イオンの雇い入れが拍車をかけた。その結果、パート・アルバイトの平均的の時給はオープン前の950円~千円から1100~1200円に15%前後上昇した。
豊川商工会議所が実施した地元企業へのアンケートによると、「従業員確保が難しくなった」が15・5%、「時給の見直しなど雇用条件を改善せざるをえない」が12・8%。時流としての賃上げかイオンの影響による賃上げか明確には分けられないが、イオンの影響があったのは間違いなさそうだ。
一方、地元の小売業者に、イオンオープン前と後で、売り上げの増減(2023年7~10月)を聞いたところ、変化なしが67・8%と多く、減ったが21・3%、増えたが7・6%。地元小売業への悪影響を心配していた豊川会議所は「結果的にソフトランディングになった」と胸をなでおろす。
地元の行政、一部経済関係者に対して店舗責任者が「オープン1年は、おおむね計画通りの売り上げを確保できた」と話している。聞き手側は「どうも語気が弱い。売り上げが今一つなのでは」と読む。豊川会議所は「3年後、6年後の定期的なテナントの大規模入れ替えで吸引力の高いテナントを誘致するだろう。地元商業とイオンの共存共栄を目指す会議所として、その動向を注視したい」とする。
















