港・運輸/「増深」工事が進む飛島ふ頭/物流網「2024年問題」に対策も/モノづくり中部の物流拠点名古屋港
名古屋港は総取扱貨物量、貿易収支(輸出から輸入を差し引いた金額)の黒字額がともに日本一を誇る。自動車産業を中心に、モノづくり王国ともいわれる中部圏の産業を支える。モノづくり中部の物流拠点としてのさらなる機能強化を目指し、岸壁整備などが進む。
■22年連続日本一
名古屋港管理組合がまとめた2023年の名古屋港港湾統計(推計値)によると、総取扱貨物量は1億5700万トンと前年比4・0%の減少ながら、22年連続で日本一を堅持する見通しとなった。
外貨貨物が後背地域の産業構成を反映し、輸出が主に完成自動車や自動車部品、産業機械などが増加する一方、液化天然ガス(LNG)などの輸入が減少し、1億800万トンと前年並みを維持した。外貨コンテナの取扱個数については254万TEU(1TEUは20フィートコンテナ1個分)と前年並みを確保し、昨年から引き続き全国3位となる見込みだ。
貿易額でも日本一を堅持した。名古屋税関が発表した名古屋港貿易概況(速報)によると、23年の貿易収支は7兆9447億円となり、1979年以降で過去最高を更新した。
名古屋港の貿易収支は1998年以降、黒字額で全国トップ。26年連続の日本一を記録した。
半導体不足の緩和に伴い、自動車の輸出額が4兆5571億円と過去最高を更新したのが主因。米国向けのハイブリッド車などが好調だった。他方で原油やLNGなどエネルギー価格の高騰が一服し、輸入額が減少したことも黒字幅の拡大につながった。
■港湾機能の向上
名古屋港は日本を代表する国際総合港湾としての位置付けながら、近年はさらにコンテナ船大型化への対応も加速させている。自動車輸出の取扱機能の集約化に向け、ふ頭の再編成が進行中だ。
飛島ふ頭の東側に位置するNCBコンテナターミナルでは、コンテナ船の大型化に対応するため、岸壁を掘り下げる「増深」と耐震化工事が進む。
22年10月に供用を開始したR1岸壁に続き、23年5月にはR2岸壁の工事にも着手した。護岸部の改良工事も進められている。また金城ふ頭でも自動車専用船の大型化などに対応する整備も急いでいる。
■時間外労働
モノづくり王国の中部圏として、避けて通れない大きな課題が「2024年問題」への対応だ。4月から、トラックドライバーらの時間外労働に年間960時間の上限を設けられた。
トラック運送・タクシー事業者は、近年の燃料費高騰などに加えて「時間外労働の上限規制」という、厳しい条件下で物流網を支えていくことを余儀なくされる。労働時間が短くなることで輸送能力が不足し、モノを運べなくなる可能性が懸念される。
国の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」は、24年問題に対して何も対策を行わなかった場合、営業用トラックの輸送能力が24年には14・2%、30年には34・1%それぞれ不足する可能性があると試算した。運転手の確保に悩む路線バスの運行会社の担当者は「路線を維持できなくなる」と悲鳴を挙げる。
いかにして喫緊の課題を解決するか。中部地方でも県境をまたぐ共同配送の協力や「連結トレーラー」の導入、貨物列車とトラック輸送を組み合わせた「モーダルコンビネーション」への取り組みも本格的に始まった。
公益社団法人全日本トラック協会も事業者向けに改善提案を行っている。まず荷主と運送事業者が連携した取り組みとしては、予約システムの導入、出荷・受入れ体制の見直しによる荷待ち時間・待機時間の削減などが挙げられる。
また「パレット化」による手荷役作業の削減、長距離輸送は中1日を空け、満載による効率的な輸送を行うリードタイムの延長なども推奨する。
いずれにしても24年問題への対応は官民を挙げての総力はもちろん、私たち消費者一人一人の理解と協力が原動力となるのは間違いないだろう。