岐阜/県内経済を下支えする東海環状道/OKB総研調査部上席研究員 中村紘子/国民文化祭25年ぶり開催/地域資源を国内外へ発信/アフターコロナ時代の新しい未来へ
岐阜県は、アフターコロナ時代の未来に向け歩みを進めている。10月14日~11月24日の42日間、「清流の国ぎふ文化祭2024」が開催される。岐阜県が世界に誇る伝統と文化など地域資源を国内外へ発信する絶好の機会となる。また、2026年度の全線開通を予定する東海環状自動車道の工事が進んでおり、高速道路ネットワークの形成を見込み、沿線には新たな企業進出も相次いでいる。
■オール岐阜で
清流の国ぎふ文化祭2024は、第39回国民文化祭と第24回全国障害者芸術・文化祭の統一名称で、各種の文化活動を全国規模で発表・共演・交流する。岐阜県では、国民文化祭は1999年度(第14回大会)以来25年ぶり2回目、全国障害者芸術・文化祭は2002年度(第2回大会)以来、22年ぶり2回目の開催となる。
岐阜県は、豊かな森を源とする清流が県内をくまなく流れ、飛騨の木工芸、美濃和紙、関の刃物、東濃の陶磁器などの伝統工芸が栄え、千年余りの歴史を持つ鵜飼いなど伝統文化も育まれてきた。さらに、関ケ原古戦場や白川郷、高山祭などの山・鉾・屋台行事など多くの観光としての魅力を持つ。
今回、オール岐阜で取り組み、魅力を発信する。オンライン通信やデジタル映像の活用など文化芸術とデジタル化の融合を図り、誰もが参加できる新たな交流によりアフターコロナ時代の新しい未来の創造につなげる。
また、一足早く、7月31日~8月5日の6日間、全国の高校生による芸術文化活動の祭典「全国高等学校総合文化祭」も開催する。全国から約2万人の高校生が集い、約10万人の観覧者が訪れる、国内最大規模を誇る「文化部のインターハイ」となる。
■新たなインフラ
東海環状自動車道は、豊田市を起点とし、瀬戸市、岐阜市、大垣市などの主要都市を経て、四日市市に至る延長約153キロメートルの高規格道路。東回りルートは既に開通し、現在、西回りルートの整備を進めている。
なお、24年度開通予定の糸貫インターチェンジ(IC)―大野神戸IC間(延長18・5キロメートル)で、橋梁工事の工法の見直しにより最大で半年程度遅れる可能性を発表している。
■進出相次ぐ
ただ、全線開通を見据え沿線では開発や投資が進み、企業の進出が相次いでいる。
3月27日には、菓子メーカーの湖池屋(本社東京都)が海津市と企業立地協定を締結した。約100億円を投じて同市の駒野工業団地に「中部工場(仮称)」を建設し、需要が高まるポテトチップスの生産能力強化や新商品開発に取り組む。25年8月に稼働する予定。
同日開催した締結式には小池孝会長と佐藤章社長、横川真澄海津市長、立会人として古田肇岐阜県知事が出席。小池会長は「一刻も早く完成させて需要に応え、地域貢献にも取り組みたい」とあいさつ。佐藤社長は「飛騨牛など岐阜県産の食材を使った商品開発を進める」と意気込みを語った。
中部工場には、オリジナルポテトチップス作りなどを体験する施設を併設する計画。さらに2期工事も予定しており、1期工事分とは別の商品の生産体制を整える予定。その際には従業員数が約300人となり、同社最大規模の工場となる。
岐阜県内経済は、新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行しておよそ1年が経過するなか、緩やかに回復している。今後は東海環状自動車道の西回りの未整備区間が2026年度にかけて順次開通していく予定で、県内経済のさらなる回復や活性化が期待される。
西回り区間沿線の西濃地域は、愛知県や関西・北陸エリアへのアクセスが一層良くなることが注目され、県内外企業の進出が相次いでいる。半導体関連や電気自動車部品の製造工場、長距離輸送の中継拠点となる物流施設、体験施設を併設する菓子工場など、昨今の社会情勢や消費者ニーズを踏まえた多様な工場・施設が集積しつつある。これらの建設工事や新規稼働は景気回復のプラス材料となるだろう。
既に開通済みの東回り区間沿線では、東濃地域を中心に自動車関連企業の集積が進んだほか、山県市の水回り製品メーカーと土岐市の美濃焼関連事業者の間で取引が始まるなど地場産業の連携が生まれた。今後、西回り沿線に新たな企業が集積していくことで、中長期的には県内産業構造の多角化が見込まれる。
企業進出以外では、今秋に開催される「清流の国ぎふ文化祭2024」(国民文化祭および全国障害者芸術・文化祭)など、県の魅力発信の機会となるイベントが注目される。また、県内観光地は訪日客の回復で活気が戻りつつある。東海環状自動車道の新規区間開通により、地域間交流や観光振興の取り組みが一層促進されることに期待がかかる。