中部の経済活動、着実に回復/国内最大のスタートアップ支援拠点「ステーションAi」10月に開業/中部圏特集/第1集 13~19面/企画・制作/中部経済新聞社 企画開発局
中部企業の経営環境が変化している。昨年5月、新型コロナの感染症法上の位置付けがインフルエンザ並みに引き下げられて以降、ホテルの稼働率など観光面を中心に、社会経済活動が活性化している。愛知県では3月にジブリパーク(長久手市)が全面開園し、10月には国内最大のスタートアップ支援拠点が開設する。JR東海はリニア中央新幹線の品川―名古屋間の2027年開業を断念する方針を示したが、中部で進む大型プロジェクトの着実な推進により、地域経済の回復を確実なものにする必要がある。
■エンジン認証不正問題
日銀名古屋支店が発表した東海3県(岐阜、愛知、三重)の3月の企業短期経済観測調査(短観)は、製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)が昨年12月の前回調査から6ポイント悪化し、プラス2となった。悪化は4四半期ぶり。非製造業は4ポイント悪化のプラス17、全産業は5ポイント悪化のプラス10だった。
豊田自動織機のエンジン認証不正問題で完成車の生産が一時停止したことで、自動車や鉄鋼、運輸といった関連する幅広い業種で景況感が悪化した。
3カ月後の先行きは、製造業が1ポイント改善のプラス3、非製造業が5ポイント悪化のプラス12、全産業は2ポイント悪化のプラス8を見込む。
■回復している業界
コロナ禍を経て、確実に回復している業界もある。
中部経済新聞社がまとめた名古屋市内主要15ホテルの2月の平均客室稼働率は77・1%と、前年同月比3・8ポイント上昇した。国内の旅行者が回復していることに加え、春節に中国や台湾など中華圏を中心とするエリアから訪日客が多く訪れた。
愛知県内では、国内外から人を呼び込むプロジェクトが進む。愛・地球博記念公園(長久手市)内のジブリパークは、スタジオジブリの映画「魔女の宅急便」や「ハウルの動く城」をイメージした新エリア「魔女の谷」を3月16日にオープンした。パーク内で最大規模となり、整備していた全5エリアがそろったことで、さらなる集客に期待がかかる。
■支援拠点
さらに愛知県が名古屋市昭和区で計画を進めている国内最大のスタートアップ支援拠点「ステーションAi(エーアイ)」が10月に開業する。新たなビジネスモデルや最先端技術を活用するスタートアップを誘致し、地域の産業競争力強化が期待される。
すでに名古屋市中村区の複合施設「グローバルゲート」に「プレステーションAi」を開設しており、本格稼働まで切れ目ない支援に注力。5年後にスタートアップ千社の集積を目指す。今年はまさに、スタートアップ集積地としての愛知が幕開けする。
リニア中央新幹線の品川(東京)―名古屋間の開業は延期が発表されたが、中部国際空港2本目滑走路を含む大型プロジェクトを着実に推進することが、地域経済活性化には不可欠となる。