ハード面の整備相次ぐ/「ほこみち」活用、賑わい高める/県内主要都市、中心市街地活性化に注力/岐阜
岐阜県の主要都市で中心市街地のにぎわいを取り戻す動きが活発化している。岐阜市と多治見市では再開発事業が進み、大垣市でも大掛かりな面的整備が進行中だ。県都と東西の中心都市で本格化する街の魅力づくりは、県全体の活力を押し上げる起爆剤として期待が高まっている。
■岐阜市
岐阜市では、繁華街の柳ケ瀬地区で35階建ての再開発ビル「柳ケ瀬グラッスル35」の建設が進む。百貨店・岐阜高島屋の南側に位置する同ビルは商業機能や分譲マンション、市の子育て拠点を併設し、2023年春に完成する予定だ。
岐阜のシンボル「柳ケ瀬」のにぎわい復活をかけたビルであり、県内外で注目を集めている。
一方、JR岐阜駅北側の岐阜市吉野町にある金華橋通りを挟んだ東西2地区でも再開発ビル2棟の建設構想が持ち上がっている。2地区の地権者組合がそれぞれ商業、オフィス、分譲マンションで構成する30階超えのビルを計画し、魅力ある県都の顔をつくる。完成は28年を予定している。
ハード面の整備を受け、地元商業界のにぎわい向上機運も高まる。岐阜市商店街振興組合連合会は同市神田町の長良橋通りの歩道上で飲食テラス席を設置したり、物販ができる制度「歩行者利便増進道路(通称ほこみち)」を活用して集客拡大を狙う考えだ。
■多治見市
JR岐阜駅前の再開発に先行して、東濃地域の玄関口であるJR多治見駅の南口で「多治見駅南地区第一種市街地再開発事業」(同再開発組合施行)が行われている。
駅南口の旧商業施設「駅前プラザ・テラ」などの跡地約2万平方メートルに、約193億円を投じて、分譲マンションやホテル、商業施設などを建てる。
マンションは29階建てで、分譲戸数225戸。ホテルは客室数164室、呉竹荘(浜松市)が運営する。商業施設は3階建てで、核テナントとして食品スーパーの三河屋(小牧市)が進出する。
空中回廊を設置して駅と直結し、今年12月に各施設が順次オープンする。新たなランドマークの誕生に東濃地域では活性化への期待が膨らんでいる。
■大垣市
西濃地域をけん引する大垣市では、中心商店街や大垣城、奥の細道むすびの地などがあるJR大垣駅南側と、大型商業施設・アクアウォーク大垣がある同駅北側の一帯168万平方メートルを対象にした中心市街地活性化基本計画の第3期計画がスタートしている。
これまで、駅南側にマンションや複合商業施設、子育て支援拠点などを整備。第3期では、にぎわいの創出、居住推進、空き店舗の解消を目指す。19年に閉店した百貨店・ヤナゲン大垣本店の跡地利用も焦点となる。
ソフト面でも動きが活発で、市や同市商店街振興組合連合会などが「ほこみち制度」を活用して市中心部の歩道上で飲食テラス席を設置する「まちなかテラス」を展開。また、同連合会は大垣駅通りを中心に毎月第1日曜日に開催する商店街イベント「元気ハツラツ市」を4月に「まちなかスクエアガーデン」にリニューアルし、市街地の回遊性を高める工夫を凝らした。
同連合会の松本正平理事長は「まちなかを回遊することで、大垣の魅力を市民に再発見してもらいたい」と話している。
■再開発の先にある住みやすさ/OKB総研調査部主任研究員/中村 紘子
岐阜県内における中心市街地や駅前の再開発は、主に名古屋市へのアクセスが良好なエリアで進んでいる。新型コロナウイルスの感染拡大以降は、大都市からやや離れた郊外の価値が見直されたこともあり、各エリアでは地価が上昇するなど追い風が吹いている。
大型マンションを伴う再開発が目立つこともポイントである。背景には、利便性の高さをアピールして新しい住民を呼び込み、居住人口を増やす狙いがある。再開発エリアを中心とした集住やコンパクトシティー化が進む可能性もあるだろう。
一方、中心市街地や駅前は従来、商業施設やオフィスビルなどが集積してきた場所である。例えば、岐阜市中心部にこれらに代わって高層マンションが建つことは、商業都市より住宅都市の性格が強まりつつあるという見方もできる。
再開発などで居住者が増えた中心市街地では、はやりの店やイベントによる「にぎわい」の創出のみならず、そこで暮らす人の満足度を高める「住みやすさ」の創出が求められる。一つ挙げるならば、居住者がまちなかで自宅や職場以外の居場所、すなわち「サードプレイス」を得られることが望ましい。気軽に顔を出せて、人とのつながりが生まれ、地域活動の拠点にもなる場所や空間、集まりが必要である。
これからの地方の市街地活性化は、再開発などと並行して、子育て中の女性、元気な高齢者、テレワークなど働き方が多様化する若者らがコミュニティーを形成しやすい環境づくりがカギとなるだろう。