量産EVいよいよ投入/30年に世界販売350万台へ/EV展開加速するトヨタ/自動車②
トヨタ自動車が電気自動車(EV)の展開を加速している。昨年末にはEVの世界販売を2030年に年350万台に増やす戦略と、22~30年に電動化の研究開発と設備に合計4兆円を投資する方針を示した。EV専用の「bZシリーズ」の第1弾として、5月12日にはいよいよスポーツタイプ多目的車(SUV)「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」を投入する予定だ。
■高い走行性
第1弾のbZ4Xは、SUBARU(スバル)と共同開発したEV専用のプラットフォーム(車台)を採用して走行性を追求している。高い加速性を実現した。EV専用の車台にしていることから電池を床下に配置して低重心化して、安定感ある走りを楽しめる。
全長は約4・7メートル、全幅は約1・9メートル。ゆったりとした車室内空間を持たせた。前輪駆動と四輪駆動を用意する。1回の充電で走行できる距離は前輪駆動で約559キロメートルに上る。
国内では、当面はbZ4Xを定額利用サービス(サブスクリプション)の「KINTO(キント)」のみで取り扱う。一般的なEVで懸念されている車載バッテリーの劣化や残価、メンテナンスに関する顧客の不安を取り除き、EVの普及につなげる。バッテリーの円滑なリサイクルにつなげる狙いもあるもようだ。
今後も車種を増やし、30年までに30車種のEVを展開する方針だ。SUVの小型タイプ、中型タイプ、3列シートの大型タイプに加えてセダンなど幅広い車種をそろえる。高級車ブランド「レクサス」では、高い走行性能を追求した「RZ」などを投入する。
■電池投資に2兆円
EVの販売拡大に伴い求められるのが車載電池の確保だ。
22~30年の電動化投資の4兆円のうち、電池の投資に2兆円を振り向ける。電池の年間供給量を280ギガワット時に増やすことを目標に掲げる。従来目標の200ギガワット時から引き上げた。材料はグループの豊田通商を通じて確保する。
電池の性能自体も向上させるよう努める。長寿命化に向けては、劣化を抑制する負極材の表面処理や制御システムなどを開発する。bZ4Xのリチウムイオン電池で、電池の容量維持率を世界トップ水準の90%にすることを目指している。
このほか、20年代前半には全固体電池の実用化を目指している。すでに全固体電池を搭載した試作車をつくり、試験走行を行っている。高出力や長い航続距離、充電時間の短さなどの特性を生かし、まずHV用で実用化する。今後も長期使用への耐性を高め、EV用に活用する。
トヨタにとってEVは、脱炭素へのラインナップの一つという位置づけだ。世界各地でエネルギー事情や車へのニーズが異なる中、EV含め多様な車の選択肢をそろえて、脱炭素化につなげる構えだ。