四日市港整備進む／北勢地域中心に工業団地開発相次ぐ／

自動車や半導体、石油化学関連など多種多様な産業が集積している三重県。北勢地域では主に製造業、中・南勢地域では主に観光業が栄える。国際貿易港の四日市港では増加する物流需要に応えるため整備事業が進められている。また、北勢地域を中心に新しい工業団地が造成され、企業誘致による地域経済の活性化に期待がかかる。

■四日市港ターミナル

国と四日市港管理組合が進めている「四日市港霞ヶ浦地区国際物流ターミナル事業」。物流の効率化や産業競争力の強化、サプライチェーン（供給網）の強靭（きょうじん）化などが目的で、事業規模は３２４億円を見込む。四日市市霞２丁目の霞ヶ浦地区北ふ頭に耐震強化岸壁（水深14メートル）と、ふ頭用地などを整備。２０２８年度の全面供用を目指す。

東南アジア航路をはじめとした船舶の大型化や貨物量の増加に対応するとともに、コンテナ船用の耐震強化岸壁の整備によって大規模災害時の物流機能を確保する。

■相次ぐ工業団地開発

県内は新名神高速道路や伊勢湾岸自動車道、名阪国道（国道25号）が通り、関西や名古屋・東京へのアクセスに優れている。東海環状自動車道は、24年度に大安インターチェンジ（ＩＣ）―北勢ＩＣ間、26年度には北勢ＩＣ―養老ＩＣが開通予定。これにより、同自動車道の西回りルートは完成し、全線が開通する予定だ。四日市港の港湾整備とともに高まる交通利便性を背景に、北勢地域を中心に工業団地の開発が進められている。

桑名市内陸部の多度南部エリアでは約37ヘクタールの工業団地が造成中。名古屋圏から車で30分程度と近場で、進出検討企業には雇用確保に有利な立地とされる。工業団地周辺では、都市計画道路の新設計画やスマートインターチェンジ（ＳＩＣ）の設置が検討されており、交通利便性がさらに高まる見通し。今秋にも一部が完成し、24年春までに全体の造成工事が完了する予定。

一方、鈴鹿市では今春、新名神高速道路・鈴鹿ＰＡ（パーキングエリア）近隣に分譲面積約14ヘクタールの「鈴鹿椿工業団地」が完成した。

■半導体産業振興へ

半導体など電子・デバイス製品の出荷額が全国１位の三重県。半導体産業のさらなる振興を目的とした産学官連携組織「みえ半導体ネットワーク」が３月に立ち上がった。県の主要産業として持続的な成長が期待できる半導体産業の人材育成に重点を置き、産業競争力を強化する狙い。

県などの行政はじめ、県内で事業を展開する半導体関連企業や三重大学などの教育機関などが参画。産官学の垣根を越えて議論する場をつくり、学生の教育やインターンシップ、企業で働く社員のリスキリング（学び直し）、共同研究などを行う。

■「Ｇ７交通大臣会合」

三重県は、海と山といった豊かな自然に恵まれ、そこで育まれた食や魅力的な歴史・文化がそろう。特に南勢地域では伊勢神宮をはじめ、大型商業リゾート施設「ＶＩＳＯＮ（ヴィソン）」、志摩スペイン村など全国的に注目を集める観光スポットが多い。

新型コロナの影響で落ち込んだ観光産業の活性化を図ろうと県は今月１日付で、雇用経済部内の「観光局」を「観光部」へ昇格させ、県の魅力発信を強化する。

こうした中、６月16～18日にかけて伊勢志摩で開かれる「Ｇ７三重・伊勢志摩交通大臣会合」に注目が集まっている。伊勢志摩では16年にＧ７首脳会議（伊勢志摩サミット）が開かれたことで三重の観光が注目され、一段と活性化した経緯がある。一見勝之知事は「三重を世界にＰＲできる絶好の機会。積極的なアピールで誘客につなげていきたい」と力を込める。