高級ホテル続々進出/商業・観光の拠点に
名古屋の中心繁華街である栄地区は、商業とビジネスに加え、観光拠点としての機能強化にも期待が高まっている。栄地区の南北中心軸である久屋大通公園周辺には、高級ホテルの進出が相次ぐ。公園自体も、20年に北エリアへのレイヤード・ヒサヤオオドオリパーク開業と名古屋テレビ塔(現中部電力MIRAI TOWER)の改修再オープン後、観光拠点としての機能が高まり、南エリアの再開発も検討されている。今後はさらに東西軸の広小路通、錦通周辺への再開発機運の高まりが期待される。
■ティアド開業
今年7月、久屋大通東側の南端に近い栄5の15の19に、「TIAD(ティアド),オートグラフコレクション」が開業する。地上14階建て、全150室で、宿泊料金は1泊1室7万900円からという高級ホテルだ。日本セレモニー(本社山口県)が、米マリオット・インターナショナルと提携して出店する。
久屋大通沿いでは、24年に開業予定の地上33階、地下5階建ての新たな中日ビルに、「ザ ロイヤルパーク」が250室で入居。その斜め向かい側の「栄三丁目25番街区」では、三菱地所やパルコなどが26年夏の開業を目指す41階建て複合ビルに米ヒルトングループの最高級ホテルブランド「コンラッド」を誘致した。室数は170室となる見込みだ。
20年に再オープンした中部電力MIRAI TOWERの4~5階にも、全15室と小規模ながら高級ホテル「ザ タワーホテル ナゴヤ」がある。
■県と市の補助金
高級ホテルの相次ぐオープンの背景には、愛知県と名古屋市が20年に開始した誘致補助金制度がある。高級ホテルの新設や建て替えを行う事業者に最大20億円を補助している。
また名古屋市は同年、都心の機能強化のため、栄地区から名駅地区にかけての建物容積率の緩和を打ち出した。狙いは、観光文化産業と商業の活性化だ。
27年予定のリニア中央新幹線開業による交流人口の増加を見込んだもので、都心部の容積率を条件付きで最大1300%とした。その条件は、低層階の店舗化と劇場や多目的ホール、高級ホテルなど「誘導施設」の設置だ。これにより、栄地区の東西軸である広小路通、錦通、桜通沿いの再開発を促す。
■公開空地での出店
市はさらに本年度から、都心部ビルの公開空地での営利事業を認める「Nago(なご)まちスペース」制度を設けた。
これまで商業利用ができなかった公開空地で、オープンカフェやキッチンカー、マルシェなどの出店を認めるものだ。
担当者は「狙いはウオーカブルなまちづくりの推進だ」とする。散策しながら楽しく歩けるまちづくりによって、商業や観光の活性化を目指す考えだ。
今後に控える久屋大通公園の南エリア再整備も、この基本方針に沿って進める。
南エリアの各広場では、休日などに多彩なイベントが開催されているが、「ウオーカブルタウンのコアとして、もっと日常的ににぎわいと憩いのある場所にしたい。特に平日夜間の利用促進が課題だ」と話す。
本年度は、公園南端部の「光の広場」と庭園「フラリエ」の再整備の検討を進め、「官民連携事業により、栄地区と大須地区の回遊性を強めたい」と考えている。