中堅自動車部品メーカー各社/自社技術応用し脱炭素化
中堅自動車部品メーカー各社は、脱炭素社会の実現に向けて、自社技術の新たな分野での活用や、仕入れ先との協力体制の強化に取り組む。農業分野への自社技術の応用や、仕入れ先企業と太陽光などの再生可能エネルギー(再エネ)電力の共同調達を通じて、持続的な成長を目指す。
■農業へも
プレス部品などを製造するフタバ産業(本社岡崎市)は、昨年11月にJAあいち三河(本店岡崎市)と岡崎市、幸田町と農業に関する連携協定を締結した。フタバ産業の二酸化炭素(CO2)の回収・貯留装置「アグリーフ」を、イチゴの農業研修施設に設置した。
アグリーフは、農業ハウスの暖房機からのCO2を夜間にためて、昼間の農作物の光合成に活用する。イチゴ栽培を促すとともに、岡崎市や幸田町全体で温室効果ガスの排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目指す活動の一環になる。
これまでも部品メーカーが農業ビジネスに取り組んできたが、多くの取り組みが軌道に乗っていないのが実情だ。脱炭素化に貢献しながら、その特性を生かして事業化につなげられるかが今後の鍵となりそうだ。
東海理化(本社愛知県大口町)は、金型内に塗料を注いで小型の樹脂部品を塗装する技術を開発した。樹脂成形後の塗装や乾燥の工程を省くことができる。金型内で乾燥まで一貫して行うことで、CO2排出量を現在に比べ約6割削減できる見込み。2025年の実用化を目指す。
高精度な金型を得意とする精工技研(本社千葉県)と共同で開発した。
開発した技術は、樹脂成形後に金型内に塗料を注いで、金型内の熱により塗料を固める仕組み。塗装や乾燥の設備も不要になり、設備のスペースを約8割減らせる。
まずはステアリングスイッチやエンジンを始動するスタートスイッチなどの樹脂部品で実用化を狙う。将来的にはアウターミラーの部品などでも受注獲得を目指す。
■共同調達
また東海理化は、仕入れ先12社と再エネ電力の共同調達を始める。23年夏をめどに中部電力グループの販売事業会社、中部電力ミライズ(本社名古屋市)を通じて再エネ電力を購入する。東海理化は共同調達のスケールメリットを生かして、供給網全体での脱炭素化を推進する。
東海理化と同社の仕入れ先協力会加盟の48社のうち12社が参画する。愛知県内の物流倉庫に新設する太陽光発電所で発電された電力のうち、余剰分を利用。遠隔地の発電設備から電力を購入する「オフサイトPPA」と呼ばれる購入契約で、中部電力ミライズから電力供給を受ける。
新設する太陽光発電所では年間500万キロワット時を発電する計画。そのうち7割にあたる350万キロワット時を、東海理化と仕入れ先が余剰電力として供給を受ける。12社は工場の一部の電力として活用。12社全体で消費電力の3%ほどが再エネ電力に置き換わる見込み。
東海理化は、30年度に仕入れ先企業の製品や生産・物流活動におけるCO2の排出量を20年度と比べて2割削減することを目指している。脱炭素の達成に向けて仕入れ先企業との連携強化が求められる中、再エネ電力を共同調達する取り組みは国内初とみられる。