訪日客取り込みに力/歴史や伝統プランに 多人数向け客室増
コロナの水際対策が緩和され、訪日客が戻りつつある。日本政府観光局(JNTO)によると、2月の訪日客数は147万5300人。コロナ前の2019年比56.6%まで持ち直し、回復率では前月を上回った。名古屋市内のホテルは、訪日客を取り込もうと歴史に触れられる宿泊プランを打ち出したり、複数人で泊まれる客室を増やしたりしている。
■日本文化に触れる
名古屋観光ホテル(名古屋市中区)は、NHK大河ドラマ「どうする家康」の放映を受け、徳川家康生誕の地・岡崎市の岡崎城と、今年1月にオープンした大河ドラマ館の入場券付き宿泊プランを販売している。武家時代の歴史に触れることができる。来年1月7日まで。
価格は1室2人3万4640円から。朝食と「観光みやげ店 おかざき屋」の土産引換券が付く。
ANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋(名古屋市中区)は3月3日、初めてロビーで「テーブルスタイル茶道」のお茶会を利用客向けに開催した。正座ではなくいすに座って飲めるため、外国人客も参加しやすく、今後も定期的に実施していく構えだ。
■誰もが利用しやすく
愛知県を中心にホテル20館を展開する名鉄ホテルホールディングス(HD、本社名古屋市中村区)は3月14日、性的少数者(LGBTQ)に関する企業研修を行った。HDの岩瀬正明社長や役員のほか、グランコート名古屋、名鉄グランドホテル(名古屋市中村区)、岐阜グランドホテル(岐阜市)などから総支配人や部門長ら計65人が参加した。
LGBTQを対象にした観光事業の世界市場規模は20兆円超えとされる。訪日客が戻りつつある中、グループホテル全体で受け入れ態勢を整える。
グランコート名古屋は、名古屋市がLGBTQのカップルなどの家族関係を証明する「ファミリーシップ制度」を導入したことを受け、ウエディングプランを作成した。他ホテルでも、例えば顧客が記入する書類の「ミスター」「ミス」の表記をなくすなど、対応を練る。
複数で泊まる訪日客向けの施策もある。名鉄グランドホテルは、2人以上の予約が多いため、2人用ベッドを設置した客室「スタンダードダブル」を50室から79室に増やした。総客室数は240室で、以前は1人用ベッドを設置した「スタンダードシングル」がスタンダードダブルより多かった。また、初めて外貨両替機を導入する。
政府は4月5日、中国本土から直行便で来日する全員に義務付けていた出国前72時間以内の陰性証明を不要にした。ワクチンを3回以上接種していれば入国を認める。さらに5月8日にコロナが感染症法上の「5類」に移行すれば、現行の水際対策を終了する。19年には訪日客の約3割を占め、「爆買い」で多大な経済効果をもたらした中国客が戻れば、日本の観光業は一層上向くだろう。