コロナ禍乗り越え、回復へ／自動車好調、景況感も改善／中部圏特集第１集／13～17面／企画・制作　中部経済新聞社　企画開発局

中部経済がコロナ禍を乗り越えて回復軌道に乗っている。主要産業の自動車業界が好調なほか、コロナ禍で落ち込んだ鉄道やホテルなどの業界も落ち着きを取り戻した。愛知県内では11月にジブリパーク（長久手市）の第２期エリアの一部が開園するほか、来年10月には国内最大のスタートアップ支援施設の開業を控える。国内外から人を呼び込む機会が増える。さらにリニア中央新幹線や中部国際空港（常滑市）２本目滑走路など、大型プロジェクトも進行しており、中部の発展に対する期待値は高い。

国内で２０２０年から流行したコロナ禍だが、今年５月８日に転換点を迎えた。新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「２類」から、インフルエンザ並みの５類に移行した。行政による行動制限につながる要請はできなくなった。これにより、社会経済活動の正常化への期待感が高まった。実際、ビジネスや観光で人の動きが活発になり、業績が回復する企業も増えている。

■景況感上昇

東海３県に本社を置く３月期決算の上場企業１７２社の23年４～６月期決算（金融、証券除く）を見ると、全体の77％に相当する１３３社が増収、純損益は55％に当たる95社が増益（黒字化含む）を確保した。

トヨタ自動車の生産拡大や円安により、自動車関連企業が好調だった。また、コロナ影響の緩和を背景に、鉄道やホテル、外食などの改善も目立った。

直近の景況感も上向いている。日銀名古屋支店が２日に発表した東海３県（愛知、岐阜、三重）の９月の企業短期経済観測調査（短観）によると、製造業の景況感を示す業況判断指数（ＤＩ）は前回の６月調査から６ポイント改善し、０となった。改善は２四半期連続。半導体不足が緩和し、完成車生産が高水準で続いているためだ。

一方、非製造業も６ポイント改善し、プラスの18になった。新型コロナの５類移行に伴い、外出の増加や経済の正常化が続き、多くの業種で改善がみられた。

■ジブリパーク

足元では、愛知県内で国内外から人を呼び込むプロジェクトが進んでいる。その一つが、愛・地球博記念公園（長久手市）のジブリパークだ。スタジオジブリの世界観を表現した公園施設で、全５エリアを開園する計画。

このうち第１期の３エリアは昨年11月にオープンした。残る第２期の２エリアも、「もののけの里」が今年11月１日、「魔女の谷」が来年３月16日にオープンする予定だ。

さらに24年10月には、愛知県が国内最大のスタートアップ支援拠点「ステーション・エーアイ」を名古屋市昭和区鶴舞に開設する計画。スタートアップの創出・育成やオープンイノベーションを促進するため、国内外のスタートアップ支援機関・大学との連携などを通じて、さまざまな支援サービスを提供する。国内外からスタートアップ千社を呼び込む予定だ。

すでに名古屋市中村区の複合施設、グローバルゲート名古屋に「プレステーション・エーアイ」を開設しており、本格稼働まで切れ目ない支援に乗り出している。

■中心部の再開発

名古屋市内中心部では、街の魅力向上やにぎわい創出につながる再開発が進む。栄地区では、新しい中日ビルが８月に竣工（しゅんこう）式を実施した。来年春には低層部の商業施設を含めて全面開業する予定だ。三越名古屋栄店北側の再開発エリアでは、三菱地所などによる超高層複合施設が計画されており、26年夏ごろに開業する見通し。再開発に連動して、栄地区では、高級ホテルなどの開業も増える計画。インバウンド（訪日客）の受け入れ余力も高まりそうだ。

一方、名古屋駅エリアでは、名古屋鉄道などが大型再開発を計画している。コロナ禍で計画を練り直しているが、24年度中には事業の方向性が明らかになる見通しだ。

中部地方の発展につながる大型プロジェクトも進行している。リニア中央新幹線の品川（東京）―名古屋間の開業や中部国際空港の２本目滑走路の整備などだ。いずれも経済波及効果が大きいだけに、着実な前進に期待が集まっている。