金融/東海の地銀、企業や自治体との連携広がる/デジタル化やSDGs取引先の課題解決に力/
東海3県(愛知、岐阜、三重)に本店を置く地方銀行7行が、外部企業や自治体との連携を広げている。2021年度(21年4月~22年3月)に業務提携や各種協定を結んだ件数は、7行合計で約730件あった。20年度比で約90件増えた。連携内容は、脱炭素化やデジタル化、SDGs(持続可能な開発目標)などのテーマが目立つ。外部の豊富な知見や技術を生かし、多様化、複雑化する取引先の経営課題の解決につなげる狙いだ。
■脱炭素化を支援
各行の提携テーマは多岐にわたるが、カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)に関する提携が際立って多い。JR貨物東海支社(名古屋市)は事業者の物流に関する脱炭素化などの課題の解決に向け、今年2月に十六銀行と連携を開始。金融機関と物流会社が脱炭素化の取り組みで連携するのは全国初の取り組みだ。JR貨物東海支社は3月に名古屋銀行とも提携した。取引先の脱炭素経営をサポートする。
デジタル化の支援については、大垣共立銀行が今年1月に本山支店(名古屋市千種区)に、地域のDX(デジタルトランスフォーメーション)をサポートする「DXコンサルティング拠点」を開設した。日本マイクロソフト(東京都)との連携による情報発信拠点も併設し、DXに関する情報を発信している。
■まちづくり会社
地域経済の発展にはまちづくりに対する取り組みも欠かせない。
十六フィナンシャルグループ(FG)は、まちづくり事業を行う子会社を4月1日に設立した。十六FGの傘下としては10社目で、地域活性化のための中心的な役割を果たす狙い。新会社の名称は「カンダまちおこし」(本社岐阜市神田町6)。クラウドファンディングを用いて地域課題の解決に向けた資金を供給する「ソーシャルインパクト投資事業」、まちの拠点となる土地・建物を利活用する「リノベーションまちづくり事業」などを手掛ける。
4月の開業式典には十六FGの池田直樹社長、十六銀行の石黒明秀頭取らが出席。カンダまちおこしの田代達生社長は「地域の成長と豊かさの実現に貢献していく」とあいさつした。
■コンサル活動強化
大垣共立銀行は、地方自治体向けのコンサルティング活動を強化している。地域課題解決のためのチームを発足させ、大垣共立銀グループの持つノウハウやネットワークを活用する。これに伴い、協業実績のあるポニーキャニオン(東京都)と、アウトドア製品やアパレル製品の開発、製造など担うスノーピーク(新潟県三条市)のそれぞれと地方創生にかかる協定を今年5月に結んだ。地域課題の解決や地方創生に貢献する。
名古屋市中村区のOKBハーモニープラザ名駅で開いた協定締結式に出席した大垣共立銀の境敏幸頭取は「金融機関だけのノウハウ、ソリューションでは地域の課題を解決するのは難しい。(外部企業の)それぞれとパートナーシップを組み、新しいサービスを展開したい」と話した。
こうした地方創生の取り組みの一環として、岐阜県養老町が進める「養老公園観光拠点整備プロジェクト」(通称YORO〈ヨロ〉ラボ)の企画・運営業務を受託した。同町と共同で来年3月まで、年間100万人以上が訪れる養老公園のさらなる誘客に向けた各種実証実験を進める。実証実験は、ご当地グルメ・特産品の開発などの4テーマで実施する。
9月の「YOROラボ」発表会に参加した同町の大橋孝町長は「大いなるプロジェクトが、このラボ(実験室)から実現することを期待している」と述べた。大垣共立銀の土屋諭常務は「既存の施設を生かして交流人口を増やし、町が発展することを祈念している」と語った。