「次世代の経営者にエールを」
トーカイ会長 小野木 孝二 氏
私の人生を振り返ると、いろいろな人との出会いによって、現在があるのだとつくづく感じている。滋賀県の片田舎の教育者の家庭で生まれ、いつも兄の背中を追っかけていたような自分が、まさか経営者になるとは夢にも思っていなかった。いろいろな人に引っ張ってもらい、さまざまな経験をさせていただき、今日まで企業経営を続けることができたと心から感謝している。
私は、滋賀県安土町で生まれ、中学の時、彦根に引っ越し、彦根東高校から京都大学に進学した。大学では工学部を専攻し、卒業したら鉄鋼メーカーに就職するものだと思っていた。ところが、大学3年生の時、初めて先代小野木三夫社長に会い、その人間的な魅力に圧倒され、養子となった。
先代はゼロからイチを生み出してきた。建設現場で働く作業員が寝泊まりする飯場(はんば)向けの貸し布団業として東海綿業(現トーカイ)を設立し、その後も病院用リネンサプライや乾式清掃のレンタルモップのリースキン事業などを手掛け、私が初めて会った時はすでに成功を収めていた。
1998年、突然ある理由で私は先代から引き継ぎ、42歳で2代目社長に就いた。先代が苦労して築き上げてきた過程を創業時から間近で見ていたなら、自然と経営のセンスが備わったかもしれないが、成功した後からの経験しかなかった。ただ、そんな私でも、先代社長からの教えや、人との出会いによって、学び、事業を進めることができた。
現在、当社グループは「清潔と健康」をテーマに「健康生活サービス」「調剤サービス」「環境サービス」の三つのサービスを展開している。健康生活サービスは、病院やホテル向けリネンサプライや福祉用具のレンタル、クリーニング設備の製造販売など。調剤サービスは、子会社のたんぽぽ薬局が調剤専門薬局を東海地域中心に154店(2024年3月現在)を展開している。
そして環境サービスは、モップやマットなど乾式清掃のレンタルのリースキンやビルメンテナンス、太陽光発電を手掛けている。売上高は連結1382億円(24年3月期)まで成長することができた。
今回の連載は、特に2代目、3代目の経営者で自信がなく、仕事を引き継ぐことに、ためらい、不安を抱いている人に対して、こんな私でも出来たということを吐露することにより、少しでもエールになればと願っている。
<プロフィル>
小野木 孝二(おのぎ・こうじ)京大工学部卒、1977年トーカイ入社。79年米コロンビア大学経営学部大学院修了、MBA取得、81年取締役、87年常務、91年専務、94年副社長、98年社長、2023年から会長。滋賀県安土町(現近江八幡市)出身。69歳。