創意に生きる~マイウェイ~中部経営者たちの物語

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第1話
「時代の流れに乗る」
シンクレイヤ 社長 山口 正裕 氏

「時代の流れに乗らないといけない」。これは父・山口正起がいつも口にしていた言葉だ。私もそれを実践して、時代の流れを読み、乗る時はより大げさに乗ることに徹してきた。

父は、テレビの受信システムを手掛けていく中で、「直列ユニット」という1本のアンテナで集合住宅の全世帯をカバーする画期的な機器を開発した。それを広めるため、1962(昭和37)年に愛知電子(現シンクレイヤ)を設立した。その少し前の59年に当時の皇太子ご夫妻(現在の上皇ご夫妻)のご成婚があり、テレビが爆発的な勢いで普及していた。さらに、高度経済成長に伴う大規模集合住宅の建設ラッシュが重なり、直列ユニットは全国で大きな評判を呼んだ。

一方、私は、米国の大学院に留学していた時、現地でケーブルテレビシステムやインターネットを目の当たりにして、その将来性を感じていた。当社に入社してからは何度も米国に出張して、放送や通信に関する最新の技術動向をつかみ、日本へ持ち込んだり、自社で機器やシステムを開発したりした96年には、国内初のCATVネットワークを活用した商用インタネットシステムを東京都の武蔵野三鷹ケーブルテレビに納入している。これを契機に全国のCATVにインターネットシステムが広まり、当社の成長につながった。

現在も新たな技術を取り入れながら、より早く安定した放送、通信を提供できる機器やシステムの開発、販売に努めている。さらに一歩進んでインターネットを利用した新規分野の開拓にも力を入れ始めた。後継者にも恵まれ、今後が楽しみだ。

こうして書いていくと、私の人生は順調に進んできたかのように見えるが、そうでもない。子どもの頃は目立たない存在で、成績も良い方ではなく、劣等感の塊だった。それが米国に留学して、たくさんの人に出会い、交流していく中で自信がつき、自分の進むべき方向性を見つけた。仕事をするようになってからも数多くのピンチに遭遇したが、必ず誰かが助けに来てくれて乗り越えることができた。人には本当に恵まれていると思う。

この連載を通して、これまでの半生を振り返るとともに、お世話になった人たちに感謝の気持ちを伝えたい。

〈プロフィル〉
やまぐち・まさひろ 米国バブソン大学大学院卒業(MBA取得)。1982年愛知電子(現シンクレイヤ)入社88年取締役91年専務94年社長。公職は2015年から19年まで日本CATV技術協会理事長、24年から岐阜県可児工業団地協同組合理事長。多治見市出身。70歳。

著者企業紹介

シンクレイヤ株式会社
本社:名古屋市中区

1962年設立。集合住宅のテレビ共聴機器の製造・施工から始まり、現在はケーブルテレビシステム・情報通信システムの設計、施工、保守や機器の製造販売を展開する。96年に国内初の商用CATVインターネットシステムを手掛けるなど、放送・通信分野の発展に貢献してきた。2003年にジャスダック市場に上場(現在は東京証券取引所スタンダード市場に移行)。24年12月期の連結売上高は約117億円。グループ従業員数は267人。

シンクレイヤ株式会社

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