「少年時代の夢を実現 指揮者への道」
指揮者 名古屋フィル音楽監督 小泉 和裕 氏

筆者近影(©Takayuki Imai)
カラヤン国際指揮者コンクール最終審査の舞台に立ち、オーケストラを前にチャイコフスキーの幻想曲「ロメオとジュリエット」を夢中になって指揮しました。東西分断の時代、旧ソ連から国の威信をかけて既に多くのキャリアを積んだ指揮者が参加しており、会場にも政治的な雰囲気が立ち込めていたそうです。演奏が終わり歓声に振り向くと、会場は総立ちのスタンディングオベーション。第1位をいただいて踏み出したあの一歩が、今の自分へと続いています。
指揮者になろうと思ったきっかけは、やはり夢があったのでしょう。幸運にも指揮者をしており、苦労も多いのですが、少年時代に自分自身で決めた道ですので、一生頑張り通せると思います。
指揮者は、「どういう環境で、どんな先生に習ったか」がそのキャラクターを決定づけるものだと思います。当時は全国でも珍しい音楽科のある京都市立堀川高校に進み、ピアノと声楽を学びました。高校では、友人たちの合奏を指揮したり、先生に頼まれて合唱の授業で指揮をして、「なかなか上手だ」と仲間たちに褒められました。
そうした小さなきっかけが増幅して、本当に指揮者になりたいと思ったのが高校3年生の時でした。それまでは京都市交響楽団の演奏会に通い、レコードやテレビのベルリン・フィル来日コンサートなどを聴きながら指揮者になりたいという思いを膨らませていました。
〈プロフィル〉
こいずみ・かずひろ 東京藝術大学指揮科で山田一雄氏に師事。1970年民音指揮者コンクール優勝、73年カラヤン国際指揮者コンクール優勝。75年ベルリン・フィル定期演奏会に登場、76年ザルツブルク音楽祭でウィーン・フィルを指揮、他にフランス国立放送管、ミュンヘン・フィル、バイエルン放送響、シカゴ響、ボストン響、モントリオール響といった欧米の名門楽団に客演。ロイヤル・フィルとチャイコフスキー後期三大交響曲のCDを完成。新日本フィル音楽監督、ウィニペグ響音楽監督、日本センチュリー響音楽監督、仙台フィル首席客演指揮者などを歴任。現在、東京都響終身名誉指揮者、九響音楽監督、名フィル音楽監督、神奈川フィル特別客演指揮者。71歳。京都市出身。





