創意に生きる~マイウェイ~中部経営者たちの物語

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第1話
「人生を自らの力で切り開く」
海栄館 会長 渡邉 幸一 氏

一国一城の主

高校3年生のとき、大きなけがで、いったんは大学進学を諦めて、働き始めたが、社会人生活で上をめざすには是が非でも大学に進学しなければならないと考え、2年浪人して早稲田大学に進学した。

名鉄百貨店に就職しトップになってやろうと大志を抱き、宣伝部門で一生懸命に働いたが、名鉄の伝統と慣習では、私がトップになれないことが次第に明らかになった。 30歳を目前に控え、一念発起し起業・独立を決断した。

今では17の宿泊施設を全国展開する海栄館の会長として旅館業をなりわいにしているが、起業を決断した際は、旅館業の将来に自分の人生をかけようと思ったわけではなかった。起業・独立することで「一国一城の主」になることが、人生の大きな目的だったと思う。自分の人生を自らの力で切り開きたい、という思いが強かった。

母が旅館業で成功を収めており、担保も何もない私が金融機関から事業資金を調達できるのは、母の信用で旅館業での起業・独立する以外に選択肢がなかったのが真実だ。

私が旅館業で起業し事業を拡大した時代は、バブル経済の頂点からバブル崩壊の不況のどん底に陥るころだ。老舗の大型旅館の経営破綻に加え、官営旅館の民間への大量売却などで、結果的に相次ぎ旅館を買収し事業拡大に弾みがついた。浮き沈みが激しい旅館経営は緻密な経営管理が必要であるにもかかわらず、どんぶり勘定の経営者が多かった。業界内で赤字旅館を引き継ぎ、黒字に立て直すことから「旅館の再生請負人」などと呼ばれていたが、魔法のつえはない。地道な経営管理を行うだけだ。

旅館は、地域の観光や地域経済にとって中核となる施設だ。旅館業の健全経営を通じて、地域経済の発展に少しでも貢献したいと思って働いてきた。

「マイウェイ」の執筆を通じて、自主独立の気概で人生を切り開いてきた歴史を紹介することで、若い方々に新しいことに挑戦する人生の醍醐味(だいごみ)を理解してもらえる機会になれば、と思う。

〈プロフィル〉
渡邉 幸一(わたなべ・こういち)早稲田大学第一文学部卒。1975年名鉄百貨店入社。名鉄百貨店退職後、81年海栄館設立、同年11月に南知多町に旅館「海栄館」を開業。全国の旅館を相次ぎ買収し事業を拡大した。2017年から海栄館会長。22年に旭日双光章を受章。南知多町出身。73歳。

著者企業紹介

株式会社海栄館
本社:愛知県知多郡南知多町
地域とともに歩み続ける旅館の再生ビジネス

渡邉幸一氏が脱サラした1981年、南知多町に旅館を運営する海栄館を設立。その後、老舗旅館などを相次ぎ買収。現在旅館、ホテルなど宿泊施設17館を全国展開する「海栄RYOKANS」グループに成長した。2024年9月期の売上高は約75億円。従業員数は約630人。

海栄館

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