米沢で挑む中部のモノづくり(下)
米沢市市長中川勝氏に聞く 産学官連携で新産業創出 人材確保支援に尽力
山形県米沢市には、このほど新工場を稼働した三井屋工業(本社豊田市)に続き、豊実精工(本社岐阜県富加町)が米沢八幡原中核工業団地、愛和ライト(本社春日井市)が米沢オフィス・アルカディアに用地を取得し、進出を計画している。中川勝市長に産業振興策などを聞いた。(聞き手・竹尾文博)
―中部企業の進出が相次いでいる。
「持続可能な地域づくりには雇用の場がしっかりあることが何より大事。新たな企業進出は米沢市を中心とした県南部の置賜(おきたま)地域全体の雇用や経済効果が高く、大変ありがたく思っている。進出企業と地域の産学官連携による、新たな産業の創出や研究開発、地元企業の付加価値の高いモノづくりの受注促進にも期待している」
―市の産業の強みは。
「市の工業製造品出荷額は県内トップ。八幡原中核工業団地は国の中核工業団地の第1号として整備されたこともあり、電気や情報通信、精密機械など非常に多様な産業が集積し、モノづくりのまちとして発展している。トヨタ自動車が東北に第三の拠点を築いたことで自動車関連の立地も増えている」
「また、市内の山形大学工学部では有機エレクトロニクス技術を使った軽く薄く曲げられる次世代の照明やセンサーなどさまざまな研究開発が進んでいる。同大学有機材料システム事業創出センターをオフィス・アルカディアに構えるなど、企業とマッチングしながら製品化に取り組んでいる」
―企業立地のメリットは。
「2017年に米沢と東北自動車道の福島間をつなぐ東北中央自動車道が開通した。宮城と岩手、関東の両方面の交通アクセスが良くなり、立地条件の大きな魅力の一つになっている。産業団地への進出企業には土地取得費の最大70%の助成や雇用奨励金を用意している。サテライトオフィス開設の補助も新設した」
―原発事故による放射線量の影響は。
「現在、不安に感じることは全くない。県の測定に加え、弊社も工場内と駐車場前にモニターを置いて毎日計測しているが、数値はかなり低い」
―進出企業にとって人材確保、育成が課題だ。
「進出企業がいかに優秀な人材を確保できるかどうかは市の大きな責任だと捉えている。市内には山形大学工学部をはじめとする三つの大学や工業高校などがあり、企業と学生をつなぐ地域の雇用対策協議会やハローワークと連携し、若い労働者の安定確保に力を尽くしている」
「地域の人材には江戸時代に米沢藩の藩政改革を果たした9代目藩主の上杉鷹山公の『なせば成る』による地道な努力や改革の精神が受け継がれている」
―今後の産業振興は。
「デジタル化やゼロカーボンの対応で自動車などモノづくりの製品はどんどん変化する。地域産業クラスターの連動を高め、常に新しい技術で新たな分野のモノづくりを伸ばしたい。SDGs(持続可能な開発目標)を含め、時代の求めにしっかり取り組んでいく」
(この連載は竹尾文博、勝又佑記が担当しました)