米沢で挑む中部のモノづくり(上)
三井屋工業 東北発のスマートファクトリー 豊田の本社工場に逆展開 将来はAIが未然に不良予防
中部地方の製造分野の企業が、山形県米沢市に相次ぎ進出している。宮城県や岩手県、関東地方両方へのアクセスに優れ、優秀な人材が確保しやすいためだ。地元行政の支援も手厚く、各社とも地域に根付いたものづくりを展開している。米沢で競争力の高いものづくりに挑戦し、全体のレベルアップにもつなげようとしている。
「新たな試みの答え探しの場。当社全体の生産性底上げにつなげたい」。米沢市で外装部品などの「東北工場」を稼働させた三井屋工業(本社豊田市)の高橋直輝社長は力を込める。
■モデル工場
東北工場は「スマートファクトリー」のモデル工場だ。IoT(モノのインターネット)などを採用し、高い生産性や品質を追求している。
特長の一つが生産状況の「見える化」だ。外装部品「リアホイールハウスライナー」の生産設備では温度などの電子データを記録している。温度が高すぎれば、管理者のウエアラブル端末に異常を知らせる。加えて従業員も電子端末を使い日報を入力することで常に生産設備のロス時間や不良数などを確認し、迅速に対応できるようにしている。
集めたデータはその場で共有できる。工場の一角には大型の電子モニターを置き、生産設備や従業員に関する情報を表示する。専用のペンで書き加えることができ、書き加えた後の画面を電子データに残すことも可能だ。さらに遠隔地ともモニター画面を共有でき、遠く離れた豊田市の本社との円滑なコミュニケーションも支える。
■半分の人員
工場ではIoTに加えAGV(無人搬送車)を活用し、最小人数での工場運営に努める。稼働当初の従業員は10人程度で、2交代勤務で操業する。従来の工場の半分の人員で対応できるようにした。
今後もスマートファクトリーの進化を目指す。生産に関するデータは蓄積し、ビッグデータとして活用することを想定。ゆくゆくは人工知能(AI)がビッグデータを基に、不良発生の未然予防などを行えるようにしたい考えだ。
■起点
東北工場での新たな試みは幅広く共有する。同工場で培ったスマートファクトリーのノウハウを、本社工場など主力工場にも逆に展開したい考えだ。同社全体でスマートファクトリーの取り組みを進めて、省人化、生産性や品質向上につなげる。
将来的には工場での省人化を進めると同時に、従業員がより付加価値の高い仕事に当たれるよう人材教育などに注力する方針だ。東北工場を起点にして、同社全体の一段の成長を目指す。