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杉本食肉産業 創業120周年対談
"肉文化"とともに120年

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「スギモト」ブランドで精肉や精肉加工品の製造販売、肉の専門店、レストランを運営する杉本食肉産業はことし創業120周年を迎える。日本の食肉文化の黎明期とも言える明治時代に創業、時代に合わせた事業展開で今日を迎えた。新型コロナウイルス感染が国内外に暗い影を落とす中、周年に合わせて名古屋市中区の本店を大規模リニューアルする。肉だけでなく、調味料や飲料まで「肉文化」の総合展示施設を目指す。これまでのスギモト、そしてこれからのスギモトについて杉本達哉社長に聞いた。(聞き手は中部経済新聞社恒成秀洋社長)

恒成:120周年おめでとうございます。まず、これまでの歴史を振り返った感想と120年継続できた源泉は何なのかを教えてください

杉本:創業は明治33年(1900年)。日本の肉の歴史は明治時代から始まりますが、当時は肉屋という存在自体まだ珍しい時代でした。私が生まれた1959年でも肉屋の数は少なかったです。食が欧米化していく中で肉が注目されていきますが、肉は肉屋で買うのが当たり前でしたから、当社は専門店として繁盛していたと思います。

スーパーが誕生してからはスーパーやホテルのレストランなどへの卸しにも力を入れました。デパートの中に肉売り場を出店し、ハムのギフトも始めました。豊田市に最新鋭の工場を建設して、量販店やお得意先から注文を頂く体制を整えました。海外にはタイと中国に出店していますが、現地の方に支持され広がりつつあります。

このようにお客様のさまざまなニーズに応えていくうちに事業の幅が広がっていきました。その姿勢は今も変わりません。

一方、私どもは生産者を非常に大事にして、つながりを深めてきました。業界の歴史の中にはBSE(牛海綿状脳症)などさまざまな危機がありましたが、私どもは決して商品を止めなかったのです。生産者から信頼していただけたことが今につながっているのではないかと思っています。

恒成:120年の間には何度も危機があったのではないですか。

杉本:経済的な危機は戦争、オイルショック、ドルショック等ありますが、業界的には牛肉自由化、BSE、O157、口蹄疫、さらに昨年の豚コレラ、鳥インフルエンザと続きました。東日本大震災の年には、放射能を浴びた餌を食べた牛からセシウムが検出され、売り上げが半分以下になりました。

恒成:度重なる危機を乗り越えてきた原動力はどこにあるのでしょう。

杉本:食品偽装など間違った方向に行く方もいらっしゃった中、私たちはお客様に誠実に対応してきました。それが長く支持していただけた理由なのかなと思っています。

恒成:今、新型コロナの影響があらゆる産業に広がり、特に飲食店は激しく落ち込んでいます。この状況を杉本さんはどのように分析し、どのような対応をされていますか。

杉本:お客様のために何ができるか、いろいろ考えて取り組んでいるところです。外食チェーンの皆様からギフトや小売りを始めたいという要望をたくさんいただいているので、それにお応えすべく動いています。

ただ、コロナの問題は永久に続くものではありません。より深刻なのは生産者の高齢化や後継者不足です。今後中国への輸出が解禁になると肉の相場が高くなって日本の消費者の口に入りにくくなるのではないかと危惧しています。生産者を大事にしなければ将来的に供給不足に陥ります。こういったところを支えていかなければいけないと考えています。

恒成:牛の肥育から生産・製造・販売まで一貫して行うことが強みになってきますね。

杉本:予想される30年後の世界的な食料不足に備えるためにも、私たちは販売するだけではいけない。そのような思いで長崎県に農業生産法人「スギモトファーム」を設立し、生産にも力を入れています。

恒成:最近、中部地区の外食企業10社で連携する団体「共創 和や会」が設立されました。

杉本:サガミホールディングスの鎌田敏行会長のお声がけで、私どもも有志企業の一員として参加しています。

恒成:どのようなことを期待されていますか。

杉本:共同仕入れや共同商品開発、さらに賛助会員として参加される酒メーカー、食品メーカーと知識を共有しながら新しい事業につなげていけたらと。新しい業態とのコラボレーションに期待しています。

恒成:今後10年先、20年先に向けてどう取り組んでいきますか。

杉本:これからは販売の仕方だけでなく、サプライヤーとしての使命、役割も変わってくるでしょう。ただ物を運んで供給するだけでなく、お客様に一番近いところに立った商品開発力、提案力が必要です。

恒成:老舗企業というとどうしても古いイメージを持たれます。

杉本:体質が古かったりスピード感がなかったりしがちなんですが、老舗だからこそ他社に先駆けて新しいことに取り組んでいかなければなりません。

もともと当社は問屋部門の売り上げが全体の約70%でした。問屋というのはある意味安定した業態ですが、例えば合併などで取引先のトップが交代して経営方針が変わると、契約内容も一変するリスクもあります。そこを克服するには自力で一般のお客様のファンを増やすことが重要です。

今後は外食、小売店を含めた直販の売り上げを全体の70%にしたいと考えています。問屋部門の売り上げを落とすのではなく直販を増やしていく形で。もちろん生産から販売までを一貫して自社で行い、「スギモト」の信用度をさらに高めてまいります。

恒成:そのためにも新しい取り組みを積極的に続けていかれるわけですね。その一つが11月20日の栄本店のリニューアルオープンですが、どういう店舗になるのですか。

杉本:「お肉をもっとおいしく、お肉でもっと楽しく」をコンセプトとして、肉だけでなく肉にまつわるさまざまなものを販売し提案するアンテナショップのようなお店です。肉料理に合うお酒やワインのほか調理器具や調味料なども提案、酒販免許を取得し酒類の販売も行います。料理の講習、実演、体験教室ができるスペースも完備しています。

新しい取り組みとして、和牛の新しい料理方法や食べ方をライブ配信します。肉を使った食生活をもっと楽しんでいただくための演出や提案をしていきたいですね。

恒成:面白いことがいろいろできそうですね。

杉本:将来はミートコンシェルジュを置きたいと考えています。お客様の声を反映させながら、ライブで発信しながら、新しい肉の需要を引き出すことができるのではないかと期待しています。

恒成:次の10年を見据えた経営目標は。

杉本:これまで脱問屋業、脱個人商店、脱ローカル企業を目指してきました。ようやく基本的な土台ができたので、次の中期計画では生産に近いところでの商品開発、当社にしかできないサービスに取り組みます。

社会に必要とされて生き残っていこうと思ったら、時代のニーズに合わせた新しいサービスを考えていく必要があります。例えば、そのお客様だけのために朝切ったお肉を夕方お届けする。鮮魚店、青果店と組んで取れたて野菜や魚を一緒に配送する。まずは狭いエリアから始めて徐々にネットワークを広げ、お客様に一番近い肉屋からお届けできる仕組みができればと考えているんです。時代に先駆ける「進化する老舗」を目指しますよ。

恒成:まず足元からスタート、地域貢献ということですね。

杉本:このエリアで圧倒的なナンバーワンと言っていただけるような支持を得ることが第一です。東京や大阪でもブランドづくりを行い、さらに知名度を高めていきたいと考えています。

恒成:ありがとうございました。

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