物流業者「お手上げ」 ガソリン価格抑制1週間 0・4円減 負担変わらず 追加策求む声
恩恵なき補助金
「自社をはじめ、周辺の競合店でも値下げの動きはない」―。
愛知県内でガソリンスタンドを運営する企業の担当者は冷めた反応を見せる。ガソリンや軽油などの小売価格は、石油元売り企業からの卸価格に各ガソリンスタンドが人件費や利益を上乗せして決まる。昨今の卸価格や輸送コストなどを考慮すると簡単に値下げはできないのが実情だ。
高騰抑制策はレギュラーガソリンの小売価格(全国平均)が170円以上となった場合に、1リットル5円を上限に石油元売り企業へ全国一律の補助金を支給する制度。「価格の急騰を抑える制度であって、価格を引き下げる制度ではない」と経産省は説明する。
ただ、先週よりも値下げに踏み切った店舗もある。県内に3店舗のガソリンスタンドを運営する企業では、周辺店舗に合わせて4円値下げをした。しかし、同社の社長は「数円程度の値下げでは販売量に変化はない。ガソリン税の撤廃などで数十円の値下げをしなくては、コロナ前の販売量には戻らない」と現状を嘆く。
物流業界も限界
物流業界からは不安の声も聞こえる。名古屋市内にある物流企業の執行役員は、「今までは自社内でコストアップ分を吸収できていた。しかし、価格高騰が長引くと荷主側への価格改定も検討せざるを得ない」と本音を漏らす。
中小の運送企業の事情に詳しい物流企業の担当者は、「1円の値上がりでも中小には重い負担となる。昨年からそのような声を聞いているので、現在の負担は計り知れない」と懸念する。
さらなる高騰も
今後の燃料油価格の推移について、中京大学経済学部客員教授の内田俊宏氏は、「春先以降は今よりも値上がりする可能性が高い」と前置きをした上で、「先進国が集中する北半球ではこれから春を迎える。新型コロナの感染状況次第では、本格的に経済活動が再開する。石油需要が一層高まるのでは」と説明する。
価格高騰が収まらなければ、高騰抑制策は3月末まで続く。3日のニューヨーク原油先物市場では、約7年4カ月ぶりに1バレル=90ドルを上回った。追加対策として関係業界では、国税として徴収する揮発油税と地方揮発油税(1リットル当たり計53・8円)を一部撤廃する「トリガー条項」の発動を求める声が多い。現在の高価格帯が続けば一般消費者をはじめ、各産業界で厳しい経営状況が続くことになりそうだ。