トヨタ系主要8社 今期6社が最終増益予想 減産や原料高、逆風に対応
■進捗率30%台
「半導体の枯渇感は22年1~3月まで継続する」(デンソーの松井靖取締役経営役員)
「材料が非常に高騰している」(豊田自動織機の河井康司経営役員)
「米国のコンテナ物流の混乱が大きな問題。22年末まで影響は続く」(豊田通商の岩本秀之取締役CFO)
29日の決算会見で各社から相次いだのは経営環境の悪化を心配する声だ。
実際、取り巻く環境は厳しさを増している。主要取引先のトヨタ自動車は4~9月の世界生産が前年同期比で17%増えた一方、直近9月単月に限れば39%も減少した。さらに視線を広げれば、鋼材や樹脂など原材料の高騰、物流混乱も深刻化している。
一連の影響は各社の利益を圧迫。4~9月期の営業利益は全8社が増益(黒字化含む)を確保した。ただ通期予想に対する進捗(しんちょく)率は、予想非公表の豊田通商を除く7社のうち5社が30%台にとどまった。
■巻き返し
各社とも車両の挽回生産を軸に巻き返しを狙う。高水準の生産への対応が課題となり、デンソーは減産時に在庫量などを正常にして、「下半期以降の増産に応える」(松井氏)。豊田合成は、米国などで懸念される人手不足に対し「自動化や省人化を進める」(岡正規取締役執行役員)ことで対応する構え。
コロナ禍からの改善も一層と進める。アイシンは、企業体質改善と構造改革で570億円の利益の捻出を狙う。伊藤慎太郎副社長は「昨年からの取り組みを持続する」と強調。ジェイテクトも「軸受け生産の無人化、拠点の統廃合などを進める」(佐藤和弘社長)という。
■将来への投資
厳しい状況が続く中でも将来に向けた投資を維持する。豊田通商を除く7社中6社が、設備投資や研究開発費を従来通りに据え置いた。豊田合成は、二酸化炭素の排出が少ない設備への更新や受注が増えているセーフティシステム分野への投資、新規事業への研究開発などを進める方針だ。
昨年からのコロナ禍ではデジタル化や働き方の見直しなどにより競争力を高めてきた。再び試練に直面する中、各社とも一層の競争力強化につなげられるかが問われている。