文学のふるさと 清須市 「清須会議」三谷幸喜 歴史の転換期伝える舞台 秀吉天下統一への第一歩
織田信長と長男・信忠が本能寺の変で家臣の明智光秀に殺され、間もなく光秀も山崎(現京都府)の戦いで羽柴秀吉に敗れた。謀反者は征伐されたが、信長の後継者決定と領地再分配の問題は残されたままだった。そこで当時各地にいた織田家の有力な家臣が集まり話し合った場所が清洲城だ。後にそれは「清須会議」と呼ばれる。
清須会議では、信長の次男・信雄を推す秀吉と、三男の信孝を立てる筆頭家老の柴田勝家の両派閥に分かれる。勝家は秀吉の影響力が大きくなることを警戒し、秀吉は将来天下を取ろうと野心を抱く。秀吉の家臣、黒田官兵衛が策略を練る一方、お市(信長の妹)は秀吉嫌いで勝家を頼り励まし続けるなどして、周囲の人間を巻き込みながら秀吉と勝家は対立を深めていく。
会議直前では勝家が優勢だったが、秀吉が信雄を見限り信忠の長男、2歳の三法師を担ぐとともに勝家側の丹羽長秀も味方につけ、信長の後継者に三法師を就かせることに成功する。さらに、妻のねねにうそをつかせて勝家をだまし、領地再分配でも秀吉が思惑通りの結果を得る。
秀吉は清須会議を機に、織田家の家臣や信長の息子らを抑え、着実に天下取りの道を歩んでいく。清洲城は秀吉の天下統一への布石に向けた場所でもあった。また、信長が桶狭間の戦いで今川義元を破った時の居城でもある。
現在、清洲城は清須市の観光名所になり、館内には甲冑(かっちゅう)や火縄銃などが展示され、3階には清須会議の紹介コーナーがある。信長や秀吉、2人とゆかりのある武将らと清須との深い関係を知ることができる。屋外には石庭や枯山水庭園があり、ゆっくり散策できる。
また、清洲城西側の五条川は、清須会議に向かう秀吉が通った川だ。五条川と清洲古城跡の周辺は、地元で有名な桜のスポットになっている。織田家の家臣もかつて、その周辺を歩いて楽しんだに違いない。
<あらすじ>時は1582年。織田信長が本能寺の変で重臣の明智光秀に討たれた後、織田家の後継者と領地再分配を巡り、織田家の家老や信長の息子が清洲城に集まり会議をする。明智光秀を討った羽柴秀吉と、筆頭家老の柴田勝家が会議を優位に進めようとする。秀吉と勝家の駆け引きや、両者を取り巻く織田家関係者の思惑や行動を描く。
<作者紹介>三谷 幸喜(みたに・こうき)1961年生まれ。脚本家、映画監督、演出家、コメディアンとして多方面で活躍している。演劇「ラヂオの時間」では、日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した。