[中部圏特集・中小企業振興] 多様なメニューで中小企業の課題解決を後押し IT化を全面支援 コロナ対策、ウェブ相談も
中小企業基盤整備機構(中小機構)は、国の中小企業政策の中核的な実施機関として、事業承継や生産性向上、災害に対応する事業継続力強化など、中小企業が抱えるさまざまな経営課題の支援を手掛ける。今年は、新型コロナウイルスの影響を受ける企業への支援策も展開している。
■IT導入支援
人口減少時代を迎えるなか、日本の成長には、企業数の99・7%を占める中小企業の生産性向上が鍵を握る。中小機構は、その手段の一つとしてIT導入の支援を強化している。
昨年、ビジネス用アプリの検索サイト「ここからアプリ」を立ち上げた。さまざま業種や利用目的から、企業の目的に合ったビジネスアプリ(顧客管理や受発注、会計、製造業向けの生産管理、飲食店向けの顧客・予約管理など)を検索、比較検討することができる。
また、実際にアプリを導入し、業務効率化につながった事例も紹介しており、企業にとっては導入のイメージがわきやすい。
また、本年度からは「IT経営簡易診断事業」を推進している。ITの専門家を無料で派遣し、3回の面談を通じて、企業の経営課題を見える化し、ITの活用で解決する方法を提案する。
さらに今年9月からは、フリーランスや兼業・副業人材を含めたIT専門家を「中小企業デジタル化応援隊」に選定し、デジタル化・IT活用の専門的なサポート体制を充実させた。
IT化を進めたい中小企業と、フリーランス等のIT専門家をWeb上でマッチングし、ITツールの選定・実装までを支援する仕組み。相談費用の一部(時間あたり最大3500円)を国が補助することで費用負担を抑えることができる。中小企業にとっては、業務のデジタル化や、テレワーク・ウェブ会議の円滑な運用、ECサイトの構築などに役立つ。
中小機構は、こうした取り組みにより、ITツールの検索から計画、実装までトータルで中小企業のIT化を支援している。
■事業継続力強化支援
近年、大型台風などによる風水被害や大規模地震など、自然災害が多発している。こうした自然災害のリスクに備え、事業を継続させるためには、事前の計画づくりが必要となる。中小機構は、中小企業の取り組みを支援するため、全国の支援機関と連携し、中小企業の計画策定支援を実施していく。
事業継続力強化には、自社1社で計画を立てる「単独型」と、複数の企業で連携体を組成し、計画を策定する「連携型」の2種類がある。
事業継続力強化計画には、①ハザードマップ等を活用した自然災害リスクの確認方法②安否確認や避難の実施方法など、発災時の初動対応の手順③人員確保や建物・設備の保護、資金繰り対策、情報保護に向けた具体的な事前対策等の項目を記載する。
計画を策定することで重要業務の見直しや会社内外の経営資源の把握など、平時における気づきや改善効果も期待され、国の認定補助金の加点や金融支援、税制の優遇措置も受けられる。また、「連携型」では他社との協力関係の構築により、平時においても不得意分野の補完、共同生産・受注・販路開拓など、業績拡大に挑戦する取り組みが期待できる。なお、計画策定のためのアドバイザー派遣費用は無料である。
■新型コロナ対策支援
今年は、新型コロナウイルスが流行し、多くの中小企業が影響を受けた。コロナで減少した売り上げの回復や、コロナ禍を踏まえたビジネスモデルの再構築などが求められている。
中小機構では、コロナの影響を受けた中小企業を対象に、支援機関が実施する経営相談会などに、無料でアドバイザーを派遣している。アドバイザーは相談テーマに応じ、中小企業診断士や税理士などの専門家や企業の経営・実務経験者などを選定する。
相談会は、隔週の特定日といった定例開催のほか、個別開催も可能。原則、1回につき、1社1時間程度の相談対応を想定している。コロナ禍のため、ウェブ会議システムを利用した相談もできる。
中小機構は、これらの支援策以外にも豊富な支援メニューをそろえている。今後も、時代ニーズに合った多彩なサービスを提供していく方針だ。問い合わせは、中小機構中部本部(電話052・201・3003)まで。