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【中部圏特集4】中部運輸局長 坪井史憲(つぼい・ふみのり)氏に聞く 運輸の動向や観光振興 インバウンド受け入れ強化へ 環境整備サポート、観光資源の魅力発信 自動運転化の取り組み支援

中部の今を伝える中部圏特集
「中部地区の物流、人流は強い製造業を背景に堅調さが見られる」と話す坪井局長
「中部地区の物流、人流は強い製造業を背景に堅調さが見られる」と話す坪井局長
 中部地域は、今後の成長戦略の一つとしてインバウンド(訪日外国人)需要の取り込みが挙げられる。また、地域産業を支える上で運輸業が果たしている役割は大きい。中部運輸局の坪井史憲局長に、中部における運輸の動向やインバウンドを中心とした観光振興の取り組みについて聞いた。

 ―中部における運輸の動向と現状は。

 「製造業が非常に強い地域であり、物流、人流ともに堅調に動いていると感じる。航空は、国際・国内線ともに好調に推移しているが、特に国際線が伸びている。インバウンドの取り込みも順調で、ことし7月分の宿泊旅行統計でみると、管内5県(愛知、静岡、岐阜、三重、福井)の延べ宿泊数は前年同月比20・1%増で、24カ月連続で前年同月を上回っている。全国平均の伸び率は5・1%であり、この地域の増加が目立っている」
 「一方で、バス、タクシー、トラックの運転手ら人材不足が深刻化しており、今後の成長への影響が懸念される。インバウンドで中部地域を訪れる観光客は増えているが、データ的にみると、例えば、旅客輸送の貸切バスが必ずしも伸びているとは限らない。これは運転手不足による影響も要因の一つにあるのではないかと考えられる」

 ―中部国際空港にLCC(格安航空会社)向けの第2ターミナルが完成し、インバウンドの受け入れ態勢の整備が進んでいる。「昇龍道プロジェクト」は8年目を迎えた。

 「空港からのアクセスはじめ、鉄道、バス合わせた周辺環境の充実により、外国人観光客は順調に増えている。中部地域は、中国はじめ、東アジアからの旅行者が7割を占めているのが特徴。『昇龍道プロジェクト』では、以前から東アジアと東南アジアを中心にプロモーションを展開してきたが、2017年度からは欧州、米国、オーストラリアをターゲットにした取り組みも展開している。欧米豪からの旅行者は、滞在日数が長く、旅行消費額も大きく魅力的。これまでに欧米豪のインフルエンサーや旅行会社、メディア関係者を招いてPR活動などを行っている」

 ―インバウンド受け入れに向けた今後の取り組みは。

 「中部地域は、外国人観光客を誘客できる余地が十分にある。今後は東アジアと東南アジアからのリピーター取り込みに加え、欧米豪市場に向けて観光資源の発掘や魅力あるコンテンツづくりを進めていく。ラグビーワールドカップを契機に、開催地である愛知、静岡の両県はじめ、中部地域にも多くの外国人旅行者が訪れている。中部運輸局としても、この機会を捉えて、来年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えながら中部地域の観光資源の魅力発信事業など強力に進めていきたい」
 「外国人観光客の受け入れ環境整備の支援にも力を入れる。無料wifiの整備や案内表示の多言語化、公衆トイレの洋式化、宿泊施設のバリアフリー化などに取り組んでいるが、まだまだ不十分だと感じる。こうした環境の整備は、今後のリピーター獲得に大きく影響してくる。観光庁の補助メニューは充実してきており、自治体などに活用を呼び掛けていく。これまでに恵那峡や中山道、名古屋城、大須観音などの観光スポット周辺で公衆トイレの洋式化を図ったり、高速道路のサービスエリアに多言語翻訳システムの導入を進めてきた。2019年度は、観光地の『まちあるき』の満足度向上整備支援事業として、郡上市で多言語観光案内標識の一体整備に取り組んだり、志摩市では観光案内所にAIチャットボットを導入することで案内業務を充実するなどの取り組みを推進する」
 「また、観光地域づくりのかじ取り役である『日本版DMO』による着地整備や地域間連携強化を進めるとともに、外部専門人材の登用や中核人材の育成支援を進めていく。中でも、中央日本総合観光機構には、各地域の観光地域づくり法人(DMO)のけん引役として期待している」

 ―中部の主力産業である自動車産業は100年に一度の大変革期を迎えている。どのような支援を進めるのか。

 「自動運転の技術などに期待が寄せられるが、ことし5月に改正された道路運送車両法では『自動運行装置』を定義し、自動運転車の安全性確保にかかる枠組みが整備された。こうした中、自治体が主体となって、大学、ベンチャー企業、通信事業者などが連携した自動運転の実証実験が各地で始まっている。中部運輸局としても、協議会などに参加して車両の安全面のアドバイスを行うなど、支援を行っていきたい。また最近では、高齢者の運転操作ミスによる事故が問題になっていることを背景に、衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時の加速抑制装置などを搭載されたサポカーが注目を集めており、普及に努めていきたい」
 「こうした自動運転車や先進安全技術を搭載した車両の整備にあたっては高度な技術が必要になってくる。自動車整備の高度化や整備士の能力向上を図る取り組みを進めることで自動車産業の変革に寄与していきたいと考えている」

 ―運輸業界を中心に人手不足を含め働き方改革が大きな課題となっている。現状と対策は。

 「バス、タクシー、トラック事業は整備士含め人手不足が深刻化している。また、高齢化も課題になっている。トラック輸送は国民生活と経済活動を支える重要なライフラインであり、バス、タクシーは地域の重要な公共交通機関でまちづくりには欠かせない。労働力不足により、人の移動や物流に支障をきたさないよう、労働力の確保や生産性向上に努めていかなければならない。そのためには、職場の魅力を向上させることも重要になってくる。全国的な活動ではあるが、運輸支局長が直接高校を訪問し、自動車整備業や運輸業の役割の重要性を説明するなど、事業者が少しでも求人活動を行いやすくするための取り組みを実施している」
 「中部運輸局独自の取り組みでは、2017年度に人材確保・育成対策推進本部を設置して、18年度から運輸事業者が行う人材確保・育成対策に関する先進事例をホームページで紹介し、表彰する事業を実施している。これまでに女性ドライバーの採用・定着率向上やモチベーション向上のためのスキル・キャリアアップ制度の導入、自動車整備業への女性の就業希望者の創出を目指した取り組みなどを行っている事業者を表彰して広くアピールしている。今後も継続して取り組んでいきたい」
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