
「モノづくりの限界に挑戦したい」と話す小林社長
トヨタ自動車は今春、部品の共通化を軸とする新たな設計手法「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」を本格始動した。商品力の向上と原価低減を両立し、コスト競争力に優れた「いいクルマ」をグローバル展開させる狙い。ただ部品の共通化が進むと、1つの部品に欠陥が生じた場合、大規模リコールにつながりかねない。部品メーカーにとってより一層の品質管理が求められる。トヨタ系で燃料噴射装置などを手掛ける愛三工業の小林信雄社長に対応策を聞いた。(聞き手・今井潤)
―部品の共通化が進むと、これまで以上に品質管理の徹底が求められる。
「昨秋に当社製品の不具合が生じたことを受けて、『グローバル品質監査プロジェクト』を立ち上げた。現場に精通した主査から課長クラス7~8人をメンバーに、年初から当社工場の主要ラインの見直し作業を進めている。今回のリコールで特損を計上し、2013年3月期の純損益が赤字に転落する見通しになったことを重く受け止めている」
「信頼を取り戻せるよう、4月から『品質の日』を定めた。毎月、指定された1日を品質に関する改善活動に時間を割く。品質に対する社員の意識を高める狙いで、海外工場でも順次実施していく」
―生産性の向上も欠かせない。
「ラインの長さが従来の4分の1の『コンパクトライン』を09年から導入している。今年度中には、豊田工場と安城工場に新たに4ライン導入し、加工費の一層の低減を図る。その効果は、現状20~30%減にとどまっているが、将来的には75%減まで引き上げる。輸送コストを考えると厳しいが、国内でも海外に匹敵するくらいの生産原価を実現したい」
―成長戦略をどう描く。
「技術開発への投資と海外生産の拡充に引き続き取り組む。14年3月期の設備投資は前期実績より1割ほど増やす。リスクもはらんでいるが、中国市場は今後も伸びるとみて能力増強を進めている。将来的には第3拠点の新設も視野に入れている。自動車市場が活発化している北米でも能力増強に着手する。ただ、まずは生産性を今以上に高めてからになる」