「論説」 円安・株高は達成したが… 息長く金融緩和続けよ

更新日:2013年 4月10日 (水)

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 日銀の金融緩和を受けて東京市場の円安・株高の動きが加速している。9日には一時、3年11カ月ぶりの円安水準となる1ドル=99円台後半をつけた。金融緩和により日本の長期金利が低下、海外との金利差は拡大しており、当分円安の流れが続きそうだ。
 東京株式市場は一時、4年8カ月ぶりに平均株価が1万3300円台を回復した。ここまでくると高値警戒感が出て終値は小幅安となったが、リーマン・ショック以前の水準を取り戻している。株価は実体経済を半年から1年ほど先取りする習性があり、景気がリーマン前のレベルに回復することを暗示している。
 07年ごろの日本経済を振り返ると、円安が固定化して輸出企業が潤う一方、原油高によりガソリン価格が高騰し、原材料を輸入品に頼る産業や庶民の生活は苦しくなった。また格差が拡大して、正社員になれず派遣やアルバイトなど不安定な就業を余儀なくされた若年層が、「ロストジェネレーション」と呼ばれた。都会にはインターネットカフェで寝泊まりする「ネット難民」が現れ、社会問題化した。
 今、安倍晋三首相が推し進めている「アベノミクス」。大方の予想を上回る大胆な金融緩和により、為替相場と株価をリーマン前に戻すことには成功した。輸出志向の製造業が多い中部地区にとっては特に追い風だ。
 もっともデフレ脱却の目安となる2%の物価上昇目標については、まだ先が見通せない。総務省が発表した2月の全国消費者物価指数は、前年に比べ0・3%下がった。足下のデフレはまだ解消されていない。
 黒田東彦日銀総裁は、2%の物価上昇目標を「2年を念頭に責任を持って達成する」と語った。そのためには設備投資や個人消費が盛り上がり、現在あるデフレギャップが解消されなければならない。需要が少ない状態では、円安による輸入原材料価格の上昇を製品価格に転嫁するのは困難だ。そのため企業業績が圧迫され、安倍首相が描くような円安→企業業績向上→賃金上昇→個人消費の増加―という流れは期待薄になる。株高などによる資産効果で高額品の消費は活発のようだが、これが消費全般に波及するには時間がかかる。黒田氏が物価上昇達成に2年かかると発言したのは、そのようなことを織り込んでのことだろう。
 これまでの日銀は、金融緩和を行ったものの、経済指標に明るさが出るとすぐに緩和の手をゆるめ、デフレ脱却の機会を逃していた。「兵力」の逐次投入や出し惜しみにより、金融緩和の総額はそれなりでも、効果を著しく減殺していた。黒田氏はそのようなことはせず、2年間は金融緩和を続けると受け止められるが、市場がどう判断するかは、今後の政策の帰趨による。「アベノミクス」は息長く行い需要を増やしてこそ効果が上がる。

 
 

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