「論説」量的金融緩和のジレンマ 立ち返るべき本来の姿求めて

更新日:2011年 9月 9日 (金)

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 リーマンショック後の状況に対応するため、米国が2度にわたって実施した金融の量的緩和政策が、世界経済停滞の原因のひとつになっている。
 米国では、中間所得者以上の多くは株式投資を行っているため、増加する通貨は株価を押し上げ、消費を刺激して、景気を回復させるのがねらいだった。
 ところが、通貨は商品市場にも流入し、価格高騰という副作用が発生。商品価格が高騰すれば、新興国を含む各国はインフレを抑制するために金融を引き締め、世界の景気が悪化する。
 世界を相手にビジネスを展開している米国企業の業績も悪化が懸念され、株価が下落して、米国国内の景気が悪化。米国国内でも、商品価格が高騰すれば消費が減退し、これも株価下落や景気悪化の要因になる。
 このように、株価を上げて景気を良くするための政策が、逆に株価を引き下げ、さらなる景気悪化を招いてしまうという動きは、量的金融緩和政策のジレンマと言われている。
 金利がこれ以上引き下げることのできない水準にあれば、通貨供給量を増やそうというのが量的緩和だが、さらなる量的緩和を行えば、今以上に景気を悪化させる要因にもなるので、実施すべきかどうか、ジレンマの状態にあるというわけだ。
 通貨市場においては、ドルの低下、逃避通貨としての円という二重のとばっちりを受け、円高を招いている。
 金融に関わる人たちがジレンマと名づける現象は、対処方法がないということであり、もはや制御できないまでに肥大化した金融というモンスターが猛威をふるうという、SF映画さながらの事態に陥っている。
 このような金融政策を行う根底には、飽くなき人間の欲望があり、モンスターの正体でもある。一体誰が退治するのだろうかと思っていたら、某金融機関からレポートが届いた。
 7月以降の相場の混乱は世界景気の先行きへの悲観論が原因であるとし、その背景として、欧米主要国は財政破綻の懸念から景気刺激策が限界に達した金融緩和政策がもたらした弊害により、主要国の金融緩和が限界に達した世界をけん引してきた新興国の景気が鈍化していく―という3つの不安を記している。
 金融なくして経済は語れないが、周辺を眺めてみれば、福祉サービスは必ずしも十分ではなく、農林水産業の近代化は不可欠であり、新エネルギー開発は避けては通れず、東北の復旧復興も急がなければならない。
 環境が不安定な時期こそ、無限の利益を追求するのではなく、ビジネスを通じて優れた価値を提供していくという、本来の姿に立ち返るべきだ。

 
 
 

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