「論説」キャッチアップからの脱却 目標は資源自給率70%の実現

更新日:2010年 9月14日 (火)

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 高齢者福祉や育児施設の充実などについて、経済成長という側面から語られることは少なく、海外富裕層に日本の高度医療を提供するツアーなどの話になると、経済戦略性を感じる人が多いのではないだろうか。
 動き始めた新成長戦略についても、官民一体でインフラを世界へ売り込んだり、中国人観光客を呼び込むなどの取り組みは、発展的な印象を与える。
 すなわち、外貨を稼ぐ事業に前向きなものを感じ、内需向け事業に消極性を感じてしまうのだ。グローバルというあいまいな言葉も、海外市場と接点の少ない企業に、将来性の薄い内向きな企業であるかのような負い目を抱かせたりする。
 このような現象が生まれるのは、結局は先進国を追い掛け続けるキャッチアップ型経済から脱け出せていないからではないかと、思い悩んできた。
 この違和感が意味のない感情ではなく、理由のあることだと教えられる機会に恵まれた。JSTイノベーションプラザ東海がこのほど「第7回JSTサロン東海」を開催し、元東京大学総長で現在は三菱総合研究所理事長を務める小宮山宏氏の講演に心響くものがあったのだ。
 小宮山理事長は、まず需要を2つに分けて説明した。ひとつは、住宅、クルマ、テレビ、新幹線、原子力発電所などの普及型需要で、日本は欧米経済を模倣しながら、これらの普及拡大に努めてきた。
 この期間がキャッチアップの期間だが、日本は量的にこれ以上の普及拡大が難しい段階に突入したため、創造的需要に対応する次の発展段階への移行を迫られている。
 ここまでなら、キャッチアップの時代は1980年代で終わり、自ら創造する次の発展段階に移行しなければならなかったが、バブル経済があり、失われた20年があって、その機会を逸した―など、似たような認識に接したことはあった。
 しかし、それが分かっていながら、日本経済はなぜ新たな発展段階に移行できず、キャッチアップ型経済を海外へ横展開するスタイルから脱け出せないのか、という問題を抱えたまま現在に至り、政治的リスクを払拭できない外需頼みの経済活動を続けている。
 原因として、小宮山理事長は「資源のない日本は加工貿易で外貨を稼がなければならない」ことを挙げ、この弱点はエネルギー改革と物質循環システムの構築によって克服でき、日本のエネルギー、資源、食料の自給率を70%にまで高めることができる―とのビジョンを提示した。
 必要な資源の70%が国内で調達できるとなれば、日本の将来設計は本質的に変わり、内需重視の時代への移行が可能になる。

 
 
 

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