「論説」ハーバード白熱教室の人気 戦略的演出が生む授業の迫力

更新日:2010年 9月 3日 (金)

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 先月、NHKBSハイビジョンで2度にわたり「ハーバード白熱教室」が再放送された。初回放送時は部分的にしか視聴できなかったため、全12回を予約録画し、向学心溢れる学生時代に戻って楽しむことにした。
 授業を行っているのは、政治哲学を教えるマイケル・サンデル教授。哲学の授業でありながら、毎回1千人を超える学生が受講し、あまりの人気ぶりから、ハーバード大学では授業非公開の原則を覆し、公開に踏み切ったのだという。
 2度も再放送されたのは、日本でも反響が大きかったからで、サンデル教授による日本での授業も行われた。
 この講義から生まれた「これからの『正義』の話をしよう―いまを生き延びるための哲学」の訳書も5月25日に出版。録画を見ながら読んでみようと購入したが、8月18日で46版を重ね、ベストセラーになっている。
 講義内容や受講生の数から判断すれば、一般教養課程の授業と思われるが、世の中には、学生時代にもう少し勉強しておけばよかったと思っている人は多く、そういう人なら、身近な話題から深く哲学的考察を重ねていく授業に、間違いなく心ひかれることだろう。
 番組からは、米国の危機の深刻さなどさまざまなものが読み取れるが、多くの人がまず感じる魅力は、1千人が受講する授業でありながら、受講生に次々と質問を投げ掛け、巧みに発言を引き出しながらともに考える、一体となった授業の展開にあるのだろう。
 それを実現しているのは、サンデル教授の優れた研究者という側面のみならず、教育者としての高いプロ意識によるのではないだろうか。
 受講生に質問を投げ掛けながら、まるでシナリオのあるドラマのように授業を展開できるのは、運営チームが編成されていて、あらかじめ可能性のある学生の発言を洗い出すなど、綿密なシミュレーションを行って講義に臨んでいるからではないだろうか。
94 しかも、ベンサムやミルなど、毎回の授業で中心的に取り上げる哲学者があらかじめ示されており、受講生は事前にこれらの哲学者の著作を読み、受講後にレポートを提出しているとすると、一連の授業を通じて、古典を読み、自分で考え、発言し、文書にまとめるという基礎学力が自然に身についていくことになる。
 さらに、古典の読書体験は、学生が社会に出て困難に直面した時、思い出してひも解けば心の支えになり、このように考えていくと、一方的に講師の意見を聞かされる授業とは異なり、戦略的ねらいが巧みに織り込まれた授業と判断できる。

 
 
 

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