「論説」円高をめぐる2つの構造 新成長戦略で通貨さらに高く

更新日:2010年 8月27日 (金)

Twitter Facebook LINE Linkedin
 

 円高に伴い、株価も下落し、デフレ脱却どころか、先行き不透明感が広まる気配。輸出が景気回復の第一の支えである日本経済にとって、事態は確かに深刻。だからといって、驚きに満ちた深刻さではなく、覚悟していたものが現実になったという、そんな深刻さではないだろうか。
 欧州諸国が景気対策から財政再建へ政策を方向転換した時、円高を覚悟しなければならない、と言われていたからだ。世界が不況になると、避難通貨として円が買われるのみならず、投資や投機目的で海外へ流出していた通貨が円として戻ってくるので、2重にも3重にも円高要因が重なる、との予測に基づくものだ。
 対ドル価格は正確に予測できなくても、世界不況時には、外貨を稼ぎ続けてきた債権国の通貨が高くなるというのが、通貨の持つ構造的特徴というわけだ。
 しかも、各国の事情から協調介入できないとなれば、構造問題を解決できると期待すること自体、無理な話ということになる。
 この構造問題に加え、日本人の考え方や行動様式まで円高向けにできている、という構造問題もある。
 これまでの外貨の稼ぎ頭であった自動車や家電などは、すでに海外生産が進んでいるが、消費国にしてみれば、雇用確保の意味から一段の現地生産を求めてくるのは必然的流れ。これらの企業はもはや国内企業ではなく、世界的ネットワークづくりを進める国際企業への道を歩んでいる。
 これらに続く産業を育成するため、新成長戦略が求められているが、例えば、国内で培ってきたインフラビジネスを官民一体で世界へ売り込むなどの取り組みも、外需依存が考え方の基本。農業振興でも、安全でおいしい日本の農産物を中国の富裕層向けに輸出しよう、という発想が生まれてくる。
 「アジアの成長を日本の内需に」というスローガンも、「内需」という言葉を使っていても、中身は輸出の拡大。内需拡大のために中国人観光客を誘致しようというのも、外貨獲得のための経済戦略であることに変わりはない。
 このように、日本人の抱く経済成長のイメージは、外貨獲得に結びつけたものが中心で、これらが実現していけば、円高は際限なく続くことになる。
 回避するには、輸出と同じ金額の輸入を行い、常にバランスを保つ努力を続けなければならないが、日本人にとって優れた企業とは、高い世界シェアを誇る世界に羽ばたく企業であり、輸出に見合う輸入の促進は浪費の印象を伴うなど、日本人の倫理意識とも無縁ではないため、この構造問題を解消するのは容易ではない。

 
 
 

2010年 8月27日の記事一覧

ニュースカレンダー

読み込み中...

過去の記事はこちらのページからご覧ください。

カテゴリー一覧

新聞の記事などについてのお問い合わせは、以下までお電話下さい。
中部経済新聞社 編集部
TEL : 052-561-5212

皆様の生の声をお聞かせ下さい。
記事に対する意見・ニュース提供

 

現在の位置:ホーム > ニュース > 2010年8月 > 27日 > 「論説」円高をめぐる2つの構造...