ナゴヤホカン ファシリティーズ 創業60周年記念対談
既存業務を盤石化し周辺分野に挑戦
ナゴヤホカンファシリティーズは今年8月に創業60周年を迎えた。ボイラー整備で創業し、現在ではボイラー・空調設備だけでなく、建築設備、プラント設備、産業用機械装置など、幅広く業務展開するようになった。今回は中部経済新聞社の恒成秀洋社長を聞き手に、三口大登社長に会社の足跡とこれからの想いについて語ってもらった。
- 創業60周年おめでとうございます。まず会社の歴史と事業内容を教えてください。
「1960年に父がボイラーの整備を手がける会社を創業以来、ボイラーや冷凍機を主とした熱源設備のメンテナンスを行ってきました。現在はシステム設計や最適なメンテナンスの提案、各種データ計測と分析評価、IT・AIを取り入れた点検・保守管理なども行っています。事業の主軸は、全体の約7割を占めるメンテナンスですが、我々はメンテナンスをただ機械を直すだけでなく、機器の更新やシステム変更を含めた、長期システム的なメンテナンスとしてとらえています。お客様に育てられ、周辺業務も行う会社へと成長することができました」
- 昨年、社名を変更されました。
「当初は『ナゴヤ保缶化学工業社』といいました。片仮名の社名がまだ珍しかった時代です。維持管理の『保』、ボイラーを表す『缶』、ボイラー清掃に使う化学薬品の『化学』を入れた名前でしたが、60年の歴史の中で業務内容も広がり、社名を変える決心をしました。お客様に親しまれている『ナゴヤホカン』を存続させた形ですが、将来は『ナゴヤホカン』と聞いただけで『あの会社だ』と分かっていただけるような事業展開をしていきたいですね」
- 強みはどこにあると感じていますか。
「メーカーからの要望もあり、社員を育てることに力を入れてきました。一人ひとりが自分たちの力で対応できるところが一番の強みです」
- 事業エリアは。
「名古屋と静岡を拠点とした東海4県が中心ですが、ご用命があれば、関東、東北、甲信越、関西地方とどこでも出向いています」
- 今後どのような展開をされますか。
「少子高齢化で若い人がいない上に、現場で働く人が少なくなっていることにどう対応していくかが大きな課題です。省力化を推進するためAI、ITを使った事業展開も考えています。さらに海外の人材をどんどん採用し育て、技術を持ち帰ってもらうなど人の問題にも力を入れていくつもりです。事業エリアも日本全国に広げてまいります」
- 人材育成は大きなテーマですね。
「当社は外国人技能実習生の受け入れ実績があります。今後、例えばアジアのどこかの国で高度な設備が発展したときに、彼らがそこで従事できるように、さらに優秀な人材はまた日本に帰ってこられるように計画立てて取り組んでいます」
- IoTやAIをどのように業務に取り入れているのですか。
「点検時に劣化が見られたり、機械が壊れてしまってから直すのが今までのメンテナンスでした。これには点検時の労力の問題、異常検知の知識、経験、熟練技術者の問題があるわけです。問題解決だけでなく、もっと発展的に考えれば、IoTを使えば24時間無人でデータ計測が可能で、またAIを使えば、そのデータから劣化の予測が可能となります。壊れたら直す事後保全では緊急度が増し、壊れる前に計画的な保全を行う予防保全では管理費が上がります。我々は60年間培ったノウハウをIoT・AIに取り入れた予知保全を研究展開しています。ものづくり補助事業にも採択されたこの取り組みにより、今まで毎年行っていた作業を2~3年に1回にすることができ、お客様の費用負担を軽くすることができました」
- 今後の計画を教えてください。
「費用がフラットになる長期保守契約、リースやファシリティーサービスなど、技術とフットワークを生かしてナゴヤホカンならではのメンテナンスを提供していきます。また、設備管理とエネルギーは切っても切れない関係です。卒FIT(固定価格買取制度の終了)の再生可能エネルギーの活用、自家消費、自己託送、VPP(仮想発電所)なども視野に入れています」
- 新型コロナの影響で設備投資を抑える動きもあります。
「機械設備の更新はコストダウンのチャンスでもあります。現行設備をそのまま更新するのではなく、稼働状況を分析して最適なシステムへの切り替えを提案します。日々の点検を強化し、大きな不具合を未然に防ぐ長期保守契約を結んでいただければ、高価な部品代が不要になり、結果的にお客様のコストが削減できます」
- 会社の将来像を、どう描いていますか。
「メンテナンス市場は将来的に縮小が予想されます。まずは社員を中心にしっかりとした柱を立てる必要があります。ボイラーなどの機械設備は、見た目は違っていても、手元の部品や作業はほとんど同じ。日々のメンテナンスで培った技量で車でもロボットでも直せる、そんな多能工的な社員になってほしい。『機械のこと、設備のことならナゴヤホカン』と言われるような会社にしたいですね」
- 具体的な数値目標を教えてください。
「今お話しした周辺業務などへの事業展開も含め、まずクリアしたいのが売り上げ10億円。さらに10年後、私が60歳を迎える節目には20億円を目指します。事業提携やM&Aも視野に入れ、今までの業界の常識とは違った、相互作用が持てる形の新しい展開をしていきたいですね」
- 最後に取引先へのメッセージをお願いします。
「お客様から叱られて学んだことがたくさんありました。信頼してくださっているからこそ叱ってくださった。お客様に育てられてきたことに感謝し、今後ともお客様と共に、設備の価値を高めていく所存です」
- ありがとうございました。
この対談の様子を動画にまとめました。ご覧下さい。