福島で磨く中部のモノづくり(2)
テラ・ラボ、無人航空機の開発加速 実験場と研究室、近接の環境生かす
原子力発電所事故による放射線量の減少に伴い、避難指示区域の解除が進む福島県沿岸部の浜通り地域。この地に、新産業の育成を目指す国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」が始動している。ロボットや廃炉、再生可能エネルギーなどを重点分野に掲げ、関連企業の誘致に取り組んでいる。
◆21の実験施設
同構想に基づく研究開発の一大拠点「福島ロボットテストフィールド」(南相馬市)が今月31日、全面開所する。約50ヘクタールの土地に、500メートルの滑走路や水没・土砂災害を再現した市街地など、陸海空で21の実験施設を整備。災害時に活用するロボットやドローン(小型無人機)などの実証実験に対応する。
施設内の研究棟には全国から16社が入居、このうち4社が中部企業だ。
昨年9月に入居したテラ・ラボ(春日井市)は、衛星通信で制御する長距離無人航空機の開発を手掛ける。より高く長い距離を飛行できる機体の開発や、災害時の3次元データ収集、解析システムの確立などを目指す。実験フィールドのすぐそばに研究室がある環境を生かし、開発のスピードアップを狙う。
松浦孝英社長は、福島進出を決める前に現地視察に参加し、津波の爪跡が残る町並みを前に「この地に何か貢献したい」との思いを強くした。地元企業と協力しながら、震災によって失われた産業の回復を目指す。
21年度をめどに、隣接する産業団地に無人航空機を量産する工場を竣(しゅん)工する計画。1ヘクタールの土地に工場や研究施設などを設け、一段の基盤強化を図る。
運営主体、福島イノベーション・コースト構想推進機構の中村敬事業部長は「場所貸しだけではない役割を担いたい」と強調。無人航空機の品質認証制度構築に向けデータ収集を進めているほか、進出企業の販路開拓などもサポートしていく考え。
◆遠隔技術開発
廃炉分野では、日本原子力研究開発機構の「楢葉遠隔技術開発センター」(楢葉町)を拠点にした実証実験が活発だ。同センターは廃炉作業用ロボットなどの遠隔技術開発に特化した研究設備を関連団体や企業、大学などに提供している。
代表的な設備の一つが、巨大な4面スクリーンに映像を投影するVR(仮想現実)システム。原子炉の設計図データや実際の内部映像を基に人が入れない空間を映し出し、作業計画の検討などに活用される。
研究設備は廃炉以外の産業用途にも提供しており、開設から4年間で施設の利用件数は230件に上った。副センター長の加島洋一氏は「多くの方に利用してもらい、遠隔技術開発を推し進めたい」と意気込む。
再生可能エネルギー分野の育成も進む。豊田通商は、楢葉町で車載電池などの材料である水酸化リチウムの工場を建設中。電池メーカーなどに供給し、電気自動車の需要拡大に対応する。