環境特集
窓で省エネ、創エネ進化を続ける建築用ガラス
断熱性能の5〜7割が「窓で決まる」
省エネと創エネで年間で消費するエネルギーを実質ゼロにする次世代建築として普及が進むZEB(ゼブ=ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とZ E H(ゼッチ=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)。設備面で太陽光発電システムやLEDなどが広く知られているが、基盤となる建物の断熱性能を高めることも欠かせない。
断熱性能を高める上で重要なのは、各種断熱材の適切な施工に加えて、建物全体の隙間を可能な限り少なくすること。そのなかでもボトルネックになっているのが窓だ。
戸建住宅においては「断熱性能の5〜7割くらいは窓で決まる」と言われるほど、窓の熱損失は大きい。窓はサッシ(枠)とガラスで構成される。サッシの材料はアルミ、樹脂、木。それぞれ長所と短所があるが、断熱性能に優れる(熱伝導率が低い)のは樹脂と木だ。特に樹脂は世界的なスタンダードになっている。日本はアルミの比率が欧米に比べて高い。樹脂化の流れに遅れをとっているという見方もあるが、気候の地域特性を踏まえると、単純に樹脂に置き換えれば済むという問題ではない。
実際、外側がアルミ、室内側を樹脂にした混合型の普及が進んでおり、この傾向は日本ぐらい。北海道などの寒冷地を除けば、複合型でも技術で十分な断熱性能を確保することができる。
調光や太陽光発電で市場規模拡大へ
ガラスはどうか。透明であるため、進化がサッシよりも分かりづらく、すでに断熱性能に優れたペア(複層)ガラスが広く普及している。ペアガラスは、2枚のガラスで空気の層を挟んだ構造で、断熱性能が単板ガラスより高い。1980年代から普及し始め、2010年頃には新築戸建の9割、集合住宅の5割を超えた。加えてガラス表面にLow-E(ローイー)膜と呼ばれる特殊な金属膜をコーティングし、断熱性能をさらに高めたタイプの普及も進む。
こうした建築用ガラスは、一見、コモディティ製品の典型のようで、どれも同じに思える。しかし、厳しくなる環境規制やニーズの多様化によってメーカーは技術を磨き、知恵を絞る。現在、世界的に注目を集めているのは調光ガラスだ。ガラスのなかに肉眼で見えないほど小さい特殊材料を入れて、電圧を制御することで電気的に透明度を切り替えられるガラスで、スマートガラスとも呼ばれる。航空機の窓や自動車の天井など幅広い用途で活用できるとして市場規模の拡大が予想されている。
太陽光発電ガラスも画期的だ。窓ガラスにストライプ状の太陽発電セルを配置することで透過性を確保。このシースルータイプのほか、ソリッドタイプもあり、2つを組み合わせることで建物の外装として利用できる。
建築用に限らず、ガラスは世界中のあらゆる場所で大量に利用され、生産量も非常に多い。このため生産自体を持続可能なものにする取り組みも欠かせない。現在、ガラスの生産工程では重油や天然ガスを燃やして原料を溶かしている。その際に発生するCO²排出量を削減していく必要がある。
着実に進化を遂げ、時代と社会の要請に応えて新たな機能を次々と付加してきたガラス。今後も大きな変化を遂げる可能性を秘めている。