環境特集
熱を帯びる次世代電池の開発競争日本に商機
官民協働で日本のお家芸復活へ
電気自動車(EV)の普及に加えて、再生可能エネルギーによる電力を効率的に活用するためのカギとされるのが蓄電池だ。市場規模は、2019年の約5兆円から2030年には約40兆円と急拡大が見込まれている。
日本勢はかつて蓄電池市場を席巻した。しかし近年は中国勢や韓国勢に押されてシェアが低下。車載用は約40㌫(2015年)から約21㌫(2020年)に、定置用は約27㌫(2016年)から約5㌫(2020年)にまで落ち込んだ。こうした状況から反転攻勢をかけようと経済産業省は今年4月、財政支援案をまとめ、2030年に日本の生産能力を現在の20倍に当たる600GW時、シェアにして20㌫を確保する目標を示した。
攻勢の源泉となるのは知的財産だ。欧州特許庁と国際エネルギー機関の共同調査によると、電池技術関連の特許出願数(2000〜2018年)において上位企業10社のうち7社が日本メーカーだ。単年だけ見ても2018年の日本勢は2339件と世界の3分の1を占めてトップ。2位の韓国に対してダブルスコアに近い差をつける。次世代電池の本命とされる全固体電池についても日本は国際特許の54㌫を占めている。問題は、こうした技術開発の優位性を市場にいかせていないことだ。
初期市場を確保してもコスト競争にさらされてシェアが低下した例は蓄電池のほか、家電、PC、半導体、液晶パネル、太陽光発電パネルなどがある。これまで中国勢や韓国勢はコスト競争力を最大の強みとしてきたが、近年は開発スピードや資金力でも日本を上回りつつある。このままでは全固体電池の実用化に至る前に日本勢は疲弊し、市場から撤退する可能性がある。そうならないためにも国をあげて後押しする体制が必要だろう。グローバルなサプライチェーンの構築も欠かせない。
持続可能な社会を見据えて、蓄電池の覇権争いはこれから一段と激しさを増す。