環境特集
巨大市場を生み出すSDGsビジネスデジタル技術とクリーンエネルギー
中小企業も活用できる世界共通のビジネス用語
持続可能な開発目標を意味するSDGsは世界共通のビジネス用語と言っていいだろう。
世界が抱える社会課題の解決を目的にした国際協力はいくつか存在するが、そのなかでSDGsがほかと大きく異なるのはビジネスを絡めている点だ。ビジネスなのだから利益が見込める。そこに企業規模の大小は関係ない。小さな企業でもSDGsの取り組み次第でコスト以上のリターンが狙える。
2015年にSDGsが採択される前まで、社会課題の解決に向けた取り組みは「ボランティア色が強く、実利に結びつかない」「安泰な大企業が率先してやるもの」といった声が多かった。そうした状況を変えた点でもSDGsの意義は大きい。
エネルギーをみんなにそしてクリーンに
デロイトトーマツが2017年に発表したSDGsビジネスの市場規模は3000兆円超と試算された。
17の目標のなかで最も大きいのは目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の803兆円。下のグラフでほかの目標と比べると、きわだって大きいことが分かる。それほどの巨大市場になる理由は、クリーンエネルギーの導入がほぼすべての経済、社会活動に影響するからだ。「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」という文脈から、まず多くの人が思い浮かべるのは化石燃料から再生可能エネルギーへの転換ではないだろうか。確かにそれは重要だが、目標13の「気候変動に具体的な対策を」と重複してくる。目標7で重要なのは、私たちのライフスタイルにかかわる移動や物流の改善だ。
例えば自動車なら電動化、建物ならHEMS(ヘムス=ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)の導入、物流なら在庫管理システムやドローンの活用など。人やモノの移動全体を効率化することが求められる。
市場規模が大きくなる理由としてもうひとつ知っておきたいのは、エネルギーを利用する人がこれまで以上に増えることだ。世界には電気を利用できない人が約8億人もいる。なかには国民の10人に9人が電気を使えない国もある。こうした途上国も今後、暮らしが豊かになり、家電や自動車などを先進国並みに利用するようになると、1人当たりのエネルギー消費量は確実に増加。しかも人口増も予想されている。
そんな将来が迫るなかで、目標7を達成するには、デジタル技術の活用が今以上に欠かせなくなる。従来のやりとりを一元管理できる上、遠隔操作も可能なので、考えられないような新しいビジネスも生まれるだろう。
この有望なビジネス領域を自社内に取り組んでいくには、エネルギーのクリーン化を自社内で始めることだ。デジタル技術を通して省エネ対策や再生可能エネルギーの活用を進めていく。一方で、自社の技術やサービスを活用した新しいビジネスを開発する。そのビジネスモデルは海外の先進国や途上国でも十分通用する可能性がある。