環境特集
コロナ禍からの経済復興グリーンリカバリー
環境対策につながる空前の景気刺激策
コロナ禍で落ち込んだ経済をどう回復させるか。世界各国でその議論の中心になっているキーワードがグリーンリカバリーだ。従来型の景気刺激策ではなく、気候変動への対応や生物多様性の保全といった環境対策につながる資金を投じて経済を復興させようという考え方である。
参考として分かりやすいのは、2008年のリーマン・ショックを発端とした世界的な金融危機からの復興だろう。製造業を中心に需要が世界的に急減し、日本でも自動車産業を中心に工場閉鎖や期間工のリストラの波が押し寄せた。翌2009年、世界のCO²排出量は前年比1・4㌫減となった。それが各国の景気対策や経済活動の再開で、2010年のCO²排出量は前年比4・2㌫増と大きなリバウンド状態を招くことになった。
コロナ禍でも製造業の低迷に加え、人の移動も制限されたこともあり、2020年のCO²排出量は前年比5・8㌫減。各国は過去にリバウンドを許してしまったことを教訓に、グリーンリカバリーを意識した景気刺激策を打ち出している。しかも過去に例のない巨額の財政出動だ。
このように各国はグリーンリカバリーに対して意欲的な姿勢を見せている。ただコロナ禍の反動増は避けられず2021年のCO²排出量は前年比6㌫増の363億㌧。過去最高を記録し、環境対策が不十分であることを示す格好となった。燃料別で見ると石炭の伸びが顕著で、排出増加分の40㌫以上を石炭が占めた。低コストで供給安定性に優れる石炭火力発電は新興国で底堅い需要がある。経済回復と環境保全の両立はやはり一筋縄では行かない。
2050年に向けた日本のグリーン成長戦略
日本では経済産業省が関係省庁と連携して「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を2020年に策定、発表した。内容は、まず洋上風力・太陽光・地熱や自動車・蓄電池など、成長が期待される14の重要分野を選定。高い目標を掲げ、技術のフェーズに応じて実行計画を着実に実施し、国際競争力の強化を図る。
例えば洋上風力を2040年までに3000万㌗から4500万㌗という具体的な目標を明示し、国内外の投資を呼び込む。自動車に関しては2035年までに新車販売で電動車100㌫の実現を目指す。これらにより2050年の経済効果は約290兆円、雇用効果は約1800万人と試算している。
政府は2050年カーボンニュートラルに向けて、2兆円の「グリーンイノベーション基金」を設立したほか、最大10㌫の税額控除や50㌫の特別償却を含むカーボンニュートラルに向けた投資促進税制を創設。政策を総動員し、グリーンリカバリーに向けた、企業の前向きな挑戦を後押していく。