環境特集
加速する電動化EV普及に向けた課題
脱ガソリンで変わる自動車産業
一段と厳しくなる環境規制を受けて自動車の電動化が加速している。内燃エンジンとモーターを動力源とする、いわゆるハイブリッド車(HV)が、これまで電動エコカーの主役だったが、電動比率をもっと高めようと、バッテリー容量を大型化するとともに外部充電を可能にしたプラグインハイブリッド車(PHEV)、そして文字通り電気だけで走る純然な電気自動車(EV)が台頭しつつある。
電動化の"肝"となるバッテリーは技術進化で航続距離(1回の充電で走れる距離)が伸びており、EVシフトに弾みをつける。ただ、課題も残る。EVを成長産業の柱と位置づける中国は、手厚い補助金政策でEVなどの「新エネルギー車」の販売台数を2012年からの6年間で100倍に拡大させ、世界最大のEV市場になった。ところが補助金を削減した途端、販売台数が半減。政府は窮余、補助金を延長した。裏を返せば、EVはまだ割高であり、補助金頼みの危うさを助長してしまった。
メーカーにとって悩ましいのは、EV普及の行方が正確に見通せない点だろう。欧州では、2030〜40年をめどに内燃エンジン車の国内販売を禁止する方針が相次ぎ打ち出されたが、果たして多額の投資に見合う利益を手にすることがきるのか。手探り状態といった感は否めない。異業種からの参入もあり、戦いの構図は複雑になる一方だ。
油井から車輪まで総合的なエネルギー効率
充電ステーションなどのインフラが整備され、EVが普及しても、社会全体で見ると必ずしもCO2排出量の削減につながるとは限らない。EVは走行中こそCO2を排出しないが、動力のもとになる電気を生み出す過程、つまり発電の仕方によってはCO2の排出量が増えるからだ。欧州のように原子力や再生可能エネルギーの割合が高ければ、その分、CO2削減効果は期待できる。しかし、中国のように効率の悪い石炭火力発電が多ければ、電気を生み出す過程で余計にCO2を排出することになる。その点、日本はどうか。東日本大震災の原発事故もあって原子力への抵抗感は根強く、発電の主力は火力だ。EVが普及してもCO2排出量は期待したほど減らないということにもなりかねない。
日本の燃費規制はこれまで、走行時のエネルギー消費に着目した「TanktoWheel(タンク・トゥ・ホイール=燃料タンクから車輪まで)」の考えを採用してきた。しかし今年4月に施行された新規制は「Well to Wheel(ウェル・トゥ・ホイール=油井から車輪まで)」の考えに転換。EVに使う電気も、化石燃料を使って発電されたものであればCO2を排出するとみなす。
EVシフトをどのように推し進めるか。再生可能エネルギーの拡充などエネルギー政策のあり方も含め社会全体で考えていく必要がある。