都市再開発特集
コロナを契機とした社会変化
ニューノーマル時代の都市機能"
働き方の多様化分散化で
新展開を迎えた街づくり
毎日混雑した電車に乗って、自宅から都心のオフィスに通勤し、仕事帰りは同僚らと一杯やって、休日はレジャーでワイワイ楽しむ―。そんな日常が新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって大きく変わった。三密を避けるために移動を制限したり、仕事のやり方を工夫したり、会食を控えたりするようになった。トーンダウンの様相は、人口が集中する都市だと一段と強まる。
9路線が発着し、全国屈指のターミナル駅を有する名駅エリアは昨年、愛知県に緊急事態宣言が発令されると、人の数が目に見えて激減した。名古屋駅の乗降客数は1日平均120万人ともいわれる。密度が高い分、影響は大きく、多くの飲食店が苦境に立たされた。一方、オフィスでは、半ば強制的にICT(情報通信技術)の活用を推し進め、在宅勤務などテレワークに対応できる体制を整えた。図らずもコロナが働き方改革を後押しした格好だ。 ワクチンや治療薬の普及によって危機意識が薄まったとしても、産業構造がコロナ禍前と同じような状況に戻ることはないだろう。むしろコロナ禍を契機とした変化は、どんどん広まり、企業のあり方はもとより、都市づくりにも影響を及ぼすことが予想される。
「職と住」の共存と
リアル価値の再認識
働き方の多様化、分散化が進めば、働く人たちがそれぞれの仕事内容に応じて、あるいは子育てや介護といったそれぞれの生活に合わせて、仕事をする場所と時間を選べるようになる。そうなると都心で日中働く人たちが夜に帰って寝るだけの街、いわゆるベッドタウンの存在意義は薄れる。代わりに求められるのは「職」と「住」が共存する街づくりだろう。そのヒントになりそうなのがウォーカブルだ。WALK(歩く)とABLE(できる)を組み合わせた造語で、歩行者を中心にデザインされた街を表す際に使われる。温暖化対策に注力するパリでは、かねてから自動車の乗り入れ規制の一環として自転車専用レーンを計画していたが、なかなか進まなかった。それがコロナ禍で公共交通機関の密を避ける意識が高まったことで、急ピッチで進むようになった。また、ニューヨークなどでは飲食店内の密を避けるために、規制を見直してテラス席を設置しやすくした。これらの取り組みを見ると、コロナという危機的な状況をむしろ積極的に取り込んで、持続可能な街づくりに活かしていこうというしたたかさが感じられる。
そもそも都市とは、商業や流通などが発達した結果、限られた地域に人口が集中している領域である。つまり密であることを前提に、経済活動が行われている。コロナ禍はその前提を根底から揺るがした。同時に密を回避しながら、生活の質と持続可能性を同時に高める新しい都市の輪郭が見えてきた。また、以前は当たり前だった直接会うことの「リアル価値」を再認識するようになったことで、リアル価値の素晴らしさを伝える仕掛けや演出も、新しい都市づくりに欠かせなくなるはずだ。
果たして名駅エリアは、どう変わっていくのか。リニア中央新幹線を見据えた再開発とともに今後の展開から目が離せない。