都市再開発特集
都心の利便性、高まる「住」ニーズ
マンション建設ラッシュ
リクルート住まいカンパニーが発表した「SUUMO住みたい街(駅)ランキング2020」で愛知県版、名古屋市版ともに1位を獲得した名古屋駅。その人気を支える要因のひとつとしてリニア中央新幹線への期待がある。名古屋~品川間を約40分で結ぶ超高速インフラが開業すれば、名古屋圏と首都圏という枠組みを越え、日常の生活圏は劇的に拡大する。時間軸に限って表現するなら、名古屋駅近辺で暮らすということは東京都心に居を構える感覚に近い。
分譲価格のリセールバリュー(価格維持率)にも人気の高さが表れている。リセールバリューは、完工から約10年経過した分譲マンションのうち中古流通している物件を抽出し、新築時と現在それぞれの分譲価格から算出した指数。東京カンテイの調査結果によると名古屋駅近辺の平均は144・8㌫(2018年)。新築時と比べて4割以上値上がりした。
現在、建築中のマンションで名古屋駅徒歩10分(約800メートル)以内のところにあるのは「オープンレジデンシア名古屋駅THE COURT」(15階建て、オープンハウス・ディベロップメント)、「グランドメゾン名駅三丁目」(17階建て、積水ハウス)、「ヴィー・クオレレジデンス名古屋駅 」(15階建て、宝交通)。それぞれの最寄り駅は亀島駅、国際センター駅、中村区役所駅だが、名古屋駅が徒歩圏にあるといっても差し支えないだろう。
もう少し範囲を広げて名古屋駅1・5キロメートル圏内で見ると建築中のマンションは北側と東側に集中していることが分かる。その中で最大級の規模となるのが総戸数462戸の「ザ・パークハウス名古屋 」(19階建て、三菱地所レジデンス)。ノリタケカンパニーリミテド、三菱商事、イオンモールと共同で進めている「ノリタケの森地区計画」のひとつで、豊かな自然環境に囲まれながら、オフィス複合型商業施設と隣接する。新しい街区といえるほどのスケールだけに、名駅エリアから人の流れを北へ広げる可能性もある。
新型コロナウイルスの影響でマンションの売れ行きを懸念する声もあるが、資材価格の世界的な高騰、企業体力のある大手デベロッパーによる寡占化などの、新築マンションの分譲価格は値下がりしにくい構造にある。そのため今後、大きく下がることはないと見る向きが強い。ただ、「新たな生活様式」によって、住まいの価値観は少しずつ変わっていくのかもしれない。