都市再開発特集
業界の垣根を越えたエコシステムの構築へ
続々、ベンチャーの育成拠点
高層ビルが林立する名駅エリア。その足元ではベンチャーや創業間もないスタートアップ企業を育成するためのインキュベート(創業支援)施設が相次ぎ登場している。
名古屋駅から北東へ約500メートル、閉校になった那古野小学校を活用して昨年10月にオープンした「なごのキャンパス」は、『次の100年を育てる学校』をコンセプトに、東和不動産を代表とする共同体が事業を進める。校舎だった3階建ての建物は、オフォス(個室)、シェアオフィス(固定席)、会議室など。1階のコワーキングスペースには跳び箱を使ったテーブルやドラムシェルを使ったランプシェードなど、随所に遊び心のある演出が散りばめられており、利用者の想像力を掻き立てるような空間が広がる。入居する企業・団体は、自動運転のソフトウエア開発、AI画像認識技術の開発、外国人材の採用・支援、ファッションのデザイン・企画、タレントのマネジメント、SNSマーケティングなど多種多様。給食室を改装した飲食店は、誰でも気軽に利用でき、地域交流を促す場にもなっている。
名古屋駅から北へ約900メートル、新幹線高架下にある「亀島ガレージ」は、ミッドランドインキュベーターズをはじめ5社で発足、2018年3月にオープンした。1階のカフェのような共用スペースは若手の経営者や起業を志す学生に無償で開放している。そのほか、JRゲートタワーには名古屋大学発のスタートアップ企業が集まる「OICX(=Open Innovation Complex)、ウインクあいちにはあいち産業振興機構による「創業プラザあいち」、栄にも目を向けると、中部経済連合会と名古屋市が設立した「ナゴヤイノベーターズガレージ」がナディアパークにある。いずれも異業種異分野の交流・対流からイノベーションを誘発し、それが再び優れた人材・技術・資金を呼び込んで発展を続ける、いわゆる「ベンチャーエコシステム」の構築を視野に入れている。
政府は今月、ベンチャー企業を集積させ新産業を育成するグローバル拠点都市として、東京、名古屋、大阪、福岡の4都市圏を選定した。今後3年間を集中支援期間と位置づけ、それぞれの拠点都市が地元の経済団体や大学などと設けた協議会に対し、優先的な補助金の支給や大幅な規制緩和を進めるほか、海外からの投資や人材の誘致なども促進していくという。大手企業もオープンイノベーション活動を強化する。
グーグル、アップル、ヤフー、フェイスブック、テスラなど、メガヒットベンチャーを生み出す米シリコンバレーに通じる先進的な起業風土が名駅エリアに根付こうとしている。