「論説」 株価と景気の関係 「相場は何でも知っている」

更新日:2013年 5月 8日 (水)

 内外ともに様々な経済指標がリーマン・ショック前の水準を回復しつつある。米国では4月の失業率が7・5%と、2008年12月以来の低水準になった。日本では東京株式市場の平均株価が4年11カ月に1万4100円を回復した。
 日本株は東証時価総額が410兆円を突破した。昨年の10月初旬は約250兆円台だったが、7カ月余で160兆円も増えた。株式の時価総額はあくまで評価益で、実際に個人や企業の懐に入るお金ではない。しかし含み益の拡大が消費に与える影響は無視できない。
 名古屋市の4月の百貨店5社の売り上げは6カ月連続で前年を上回った。株高による個人消費の回復で、宝飾品など高額品の売れ行きが活発だったという。
 上場企業の13年3月期の決算発表が本格化する中で、輸出企業を中心に14年3月期に増益を見込むところが増えている。この動きが内需関連企業にも波及すれば、経済全体の底上げが可能になる。
 半面、全国の有効求人倍率や企業の設備投資は、まだリーマン前の水準を下回っている。有効求人倍率は1倍を下回っており、徐々に回復しつあるとはいえ、人余りに変わりはない。これらの指標は、株価などと異なり「遅行指標」といわれ、全体の経済の動きに遅れて変動することが知られている。
 景気が回復する時には株価がまず上がり、個人消費がそれにつれて改善。企業は需要が活発化なことを見極めてから設備投資を拡大し、従業員を増やすというサイクルになる。景気が天井をつけて下降するときには、逆の流れになる。
 したがって今の株価上昇は、今後の景気拡大や雇用の改善を先取りしていると思われる。
 物心がついた時にはバブル経済が崩壊し、リーマン・ショック後に社会に出た、いわゆる「不況ネイティブ世代」には、景気回復といっても実感がわかないかもしれない。しかし、過去の歴史を振り返ると、株価と景気の相関関係はほぼ例外なく現れている。
 今後の問題は株価がどの時点で天井を打ち、景気の腰が折られるかだ。予定される消費税の引き上げ、TPP交渉の行方、中韓など近隣諸国との関係といった不透明なファクターが山ほどある。すべて安倍政権の政治運営の巧拙にかかっている。そのいずれかでつまずけば、海外の投機資金の「日本売り」の材料にされ、長期金利の急騰→国債価格の急落→銀行など国債を大量に保有する機関の経営悪化や財政危機などを招くリスクがある。
 したがって、今の時点で「アベノミクス」がうまくいっているように見えるからといって、浮かれることはできない。それが今後もうまくいくかどうか、予測は難しい。昔からある格言に「相場は何でも知っている」というものがある。その言葉をもう一度かみしめてみたい。

 

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